ソード
クエルクス〜ドーセットまでが旅パメンツ。
リウグレン

2022/09/19 13:13


とある学芸員の日誌

○月✕日 担当︰〇〇
本来は簡潔に記入するものであるが、如何せん奇妙な出来事であった為、詳細を頭から説明する事にする。
朝、私がここに着いた頃には既に着いていた職員達が大騒ぎしていた。盗難があったようだ。
盗まれたのは以下の通り。
・△△王朝時代の兵庸 6点 (個々を判別する識別番号の羅列)
・京劇に使われたとされる衣装(識別番号の羅列)
何故犯人はわざわざ重たい兵庸を狙ったのか?しかもセキュリティは今回作動していない。
監視カメラを見てみると、驚くことに犯人の姿はひとつも映っていない。それではカメラの外から投げ縄でも使って品物を手繰り寄せたのだろうか…。画質が荒いので何とも言えないが私が見るに兵庸は関節を曲げ自分で動いてるように見えた。一つの兵庸は他の五体に近付き、まるで仲間の安否を確かめるように顔を覗き込むような仕草をしていた。かと思えば、それらはカメラの外に消えていったのだ。
まるで非科学的だが私が見た限り映像はそう映っていた。まあ、警察も呼んだことだし兵庸は重要文化財だ。すぐに犯人の足取りは掴めるだろう。
今回の件で本日は休館。明日まで警察が入り、状況を調査する。




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遠い昔、遠いある国にて王が死んだ際に共に埋葬された陶器で出来たヒトガタ。
それらは蒐集家によって買われ、海を渡り、博物館に納められていた。
しかし物も長く生きれば命を宿すというもの。ヒトガタの一つは突如命を吹き込まれほかのヒトガタ五体を連れ博物館から逃げ出した。
何も覚えていないのはヒトガタであるからして当然だが、一つだけ覚えていた。それは自分は彼の地で王に仕えていた将軍だという事。仕えていたと言うよりただ王の墓に共に埋められたに過ぎないのだが、彼の中ではそれは捏造され過大化し彼を動かす原動力となっていった。
そして今日も彼はかつての主をを求め彷徨い続ける…。

「汝に問う。余は何者たるや?余の主は何処にいるのか?」

話し方が時代錯誤でもまるで服装がその地に暮らす人々と違うのも、記憶がまるでないのも己が攫われてきたからだと思い、自身が人形(ヒトガタ)であり、主などとっくに死んでいるということなど微塵も信じない。クエルクス一行にそれを指摘された時には怒髪天を衝く勢いで怒りだし手がつけられなかった。
五体のヒトガタは彼が魔力で動かしているのだが、彼にはれっきとした生身の人間に見えている。戦う時は彼らを自分の手足のように操る。また自身や他の五体が壊れても多少は魔力で戻せる。

性格は気分屋で好き嫌いが激しい。
クエルクス一行とひとしきりバトルしたあとは満足して彼らと食を共にした(食べる必要も眠る必要も無いので形のみだったが)。
機嫌がいい時には名前を縮めて呼ぶことを許してくれる。
「哈哈哈!とてもいい気分だ、貴様を気に入った、余のことをリウと呼ぶことを許さんでもないぞ」
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