ソード
クエルクス〜ドーセットまでが旅パメンツ。
ヘーゼル

2022/09/18 23:02

ウゥルペスの屋敷のメイド。
ウゥルペスの事は10も満たない時から面倒を見ており、心の中で密かに弟のように思っている。
性格は穏やかで幼い頃より大人びて見られたがそれも初見でそう思われるだけで、実際はかなりのおっちょこちょいで良く洗濯したばかりのシーツを汚してはシクシク泣いている。
人の役、特にウゥルペスの役に立てることを何よりの喜びとしている。
メイドとして役に立とうと日々奮闘しているが、あまり成長は見られない。
ただ裁縫と編み物がこの町一番と言われるほど得意で、同僚らの服のほつれを直したり、手袋などを編む様子が多々見受けられる。
いつも笑みを絶やさず失敗はするが誰にも疎まれず好かれる風貌。
服やメイドキャップにつけたリボンは折々にウゥルペスがくれる高級菓子の箱に付いているもので、貰った嬉しさと感謝を忘れないよう身に着けている。

前述のとおり、心中ではウゥルペスを弟のように思うものの、普段は「ウゥルペス坊ちゃま」と呼び節度を守っている。
ウゥルペスからの恋心には全く気付く様子を見せず、また気付いたとしてもヘーゼルにとってウゥルペスは主人であり弟であるからそんな道に進むつもりは毛頭ない。
ウゥルペスが連れてきた平民の友人であるルプスに対して同じ身分であり、気兼ねなく話せることから心惹かれる。

「どんくさい私を拾ってくださったウゥルペス坊ちゃまには本当に頭が上がりません。」
「まあまあまあ!ウゥルペス坊ちゃまったらそんなに鼻を赤くさせるほど寒いのを我慢して!私には何でも言ってくださっていいんですよ」
「ルプス君、これからも坊ちゃまと仲良くしてあげてくださいね、あの方がお屋敷にご友人を連れてくるなんて滅多に無いことで、私とっても嬉しいの」

○屋敷勤め前のヘーゼル○
城下町にある服屋に生まれる。兄が2人おり、ヘーゼルは末っ子。両親は家は兄のどちらかに継がせる予定であったからヘーゼルは家の掃除や洗濯など将来嫁に出すための仕事を押し付けられた。これらの仕事をヘーゼルは上手くできず家族からはどんくさい娘、と思われていた。
この服屋は貴族も訪れる程大きな店であり、ある日誕生日で新しい服を買いに来たという貴族の親子がやって来た。ヘーゼルはお茶出しなど彼らの応対を任されたものの、失敗ばかり。涙ぐむものの家族はどんくさい娘ですみませんあとで叱っておきますから、と貴族の親子にペコペコしてばかり。
「僕の誕生日、父上なんでも買ってくれると仰いましたよね」
「ああ、だから服を買いに来たんじゃないか。乗馬用の新しい服が欲しいって、ウゥルペス言っただろう?」
叱られてその場を離れたヘーゼルの耳に貴族の親子の会話が聞こえる。
「なら、僕はあの子を雇いたいです。服はやめにします。」
そうしてヘーゼルは屋敷に迎え入れられた。ウゥルペスはヘーゼルに何が得意か聞き、彼女の意見を尊重し、縫製の仕事を主に回した。だからヘーゼルはウゥルペスに恩を感じているのだ。高価な乗馬服より自分に価値を見いだしてくれたあの日のウゥルペスに。
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