ただの男の子
「お前は俺の母さんを見殺しにした!救う力があったのに!!」
「おい、やめろって」
「うるさい!!」

頭に血が上っているのか、周りの言葉を全く聞いていない。
男の子が悠一くんと目が合った瞬間、突然怒鳴りだした。

「お前は未来視のサイドエフェクトを持っているんだろ!!なのにお前は間に合わなかった!」

男の子の友達であろう人が腕を掴んでいるにも関わらず、彼は悠一くんに向かっていこうとする。

「悠一くんは知らない人間の未来は見えないの」
「知ったことか!お前らが母さんを見殺しにした事実は変わらないだろ」

悠一くんはこんなに言われているのに、なにも言い返さない。

「大規模侵攻で家族を失ったのは君だけじゃない。確かに死者や行方不明者を出したのは私たちが至らなかったせいでもある。それはこちらの落ち度だ」

悠一くんだって出来るなら全ての人を助けたかっただろう。
だって、悠一くんは大切な人をもう2人も亡くしているから。
失う怖さは知っている。

「でも、叫んでも喚いても死者は蘇らないし行方不明者は帰ってこない」
「そんなことは分かってる!」
「分かってるならなんで悠一くんに当たるの。どこにも向けようのない怒りを手短な人に責任転嫁するのは間違ってる。悠一くんはそんなことのために戦ってるんじゃない」
「じゃあどうすればいいんだ……」
「強くなって、自分と同じ思いをする人が減るようにしなよ。こういうのは悲しいよ。幸い、君にはそれができるだけの素質はあるんだから」

サイドエフェクトは神のような能力じゃない。
あくまで“副作用”だ。

「あそこでなにも言わない方がよかったんだろうけど、私は悠一くんが悪者みたいに思われるのが耐えられなかった。ごめんね、悠一くん」
「いや、嬉しかったよ。波折みたいに分かってくれる人がいるってことは知ってるから。あーもう泣くなよ」
「悠一くんが泣かないから……っ代わりに泣いてあげてるの」

サイドエフェクトがあったとしても、それ以外は普通の人と何も変わらないのに。
なんで周りは悠一くんを“特別”にしたがるの。
私と1つしか変わらない、ただの男の子なんだよ。

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