屈しない
トリオン兵が三門市を襲う。
今までの小規模な侵攻の数倍の規模で侵攻してきた。

「うわぁぁあっ!!」

逃げ惑う人。
通常の武器が効かない敵を人々は恐れた。
こんな時のために私たちは強くなった。
今度こそ守るために。

「何してるの、早く逃げて!」
「!!」

私はただ見てるだけなんて嫌だった。
何もせずに殺されるのも嫌だ。

「男の子でしょ。泣く前にすることあるんじゃないの」

男の子の隣に横たわる女性。
この子を守ったのか。

「大丈夫、まだ息がある。私も手伝うから早くここから離れよう」
「わ、分かりました」
「諦めないで。きっと助かる」

死者と行方不明者を多数出して、大規模侵攻は幕を閉じた。
それから、私たちの組織“ボーダー”は公に出ることになったのだった。

「意外と居るな、入隊希望者」
「本当だ」
「学校の同級生がちらほら」
「私もそうだよ」
「まあ、そうなるわな」

トリオン供給器官が成長するのはせいぜい成人するまで。
成人した後は、どんどん衰えていくという。

「そういえば、すっごいイケメンがいた」
「イケメン?」
「俺の学年の王子様とか言われてる奴だった」
「それはやばい」

大規模侵攻の後、家族が無事だったことを知った。
お母さんにはひどく心配されて、泣きながら怒られた。
それから、私はお母さんに本当のことを伝えた。
私はボーダーに所属しているのだと。
話をする際、忍田さんが詳しく説明してくれた。
あまりいい顔はされなかったけど、私がしたいことをさせる、とだけ言ってくれた。
いい顔をされないのも当たり前だろう。
ボーダーに入ることは、兵隊になることと同義だから。
子供が兵隊になることを快く了承する親なんかいない。
周りの処理が落ち着いてから鋼に会いに行った。
鋼は安堵した表情で抱きしめてきた。
心配した、と鋼にも怒られた。

「てか、波折最近あの人と何話してんの?」
「あの人?」
「東……なんだっけ」
「あー、東春秋さんね。東さんと私で狙撃用トリガーのモニターになって欲しいって開発部に言われて」
「え、弧月は?」
「戦う相手が欲しいならいつでも相手するよ」
「ならいいんだけど」

東さんと話すのは非常に有意義で、それでいて楽しい。
博識だし、たまに兵法の話もしてくれる。
あの人は指導者の素質がある人間だと思う。
忍田さんもそれが分かっているようで、それとなく東さんに促しているような気がしてならない。

「悠一くんは隊とか組まないの?」
「俺は実力派エリートだからさ」
「それは答えになってない」
「ま、今は1人でいるよ。波折もそうだろ?」
「あ、バレてた?」
「バレバレだから」

もし悠一くんが隊長になったら迅隊になるけど、語呂悪いな。

1/24
prev  next
ALICE+