目が離せない後輩
「そういえば、波折と三輪は初めましてだな」
「確かにそうですね」
じっとこちらを見つめてくる三輪くん。
噂には聞いていたけど、この子本当に顔色悪そうだな。
「三輪、こっちは天喰波折。今は俺と一緒の狙撃手(スナイパー)だが、弧月もかなり腕がたつ」
東さんに褒められて嬉しい。
「よろしくね、三輪くん」
「よろしく、お願いします……」
目の下の隈が気になるなあ。
悠一くんも一時期、隈が酷いときがあった。
その時は、悠一くんが寝るときに一緒にいるようにした。
悠一くんがどんな夢を見て飛び起きても、隣に誰かがいれば安心するんじゃないかな、って思ったから。
何回も飛び起きる悠一くんに『大丈夫だよ』と言って背中を撫でていると、次第に飛び起きることがつなくなった。
「お節介だったらごめんね。三輪くん、ちゃんと寝てる?」
「いえ、よく眠れないので……」
「眠ることは脳を休めるということだよ。しっかり寝ないと。脳がパンクしちゃうから」
「波折の言う通りだぞ。トリオン体では大丈夫でも、生身のときに倒れるかもしれないからな」
と東さんが言う。
「無理はしないでね」
「……気をつけます。あの、もし良かったら俺と模擬戦してもらえませんか」
「私でいいの?」
「天喰さんがいいんです」
弧月使いなら私以外に優秀な人、たくさんいるのにな。
まあいいか。
「反射神経は及第点。でも、まだ受け太刀が甘い!」
「っ!?」
『戦闘体活動限界、緊急脱出(ベイルアウト)』
「ありがとう、ございました」
「こちらこそありがとう。さっきはキツく言っちゃったけど三輪くんはスジがいい。基本はしっかりしているから、後は努力次第でどうとでもなるよ」
「本当ですか?」
「私は嘘はつかない。ですよね、東さん」
「そうだな。三輪は才能があるし、強くなるよ」
「また時間があれば模擬戦していただいてもいいですか?」
「もちろん。こちらこそよろしくね」
放っておけないという意味で目が離せない後輩ができてしまった。
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