貪欲な人たち
東さんが隊を結成するという話を聞いた。
忍田さんが割と強引に決めたというチームは、まあ簡単に言うと化け物みたいに強い人たちだった。
あの三輪くんがいるらしい。ほかの人も将来のボーダーを担うであろう人たちだ。
第一、頭脳戦では右に出る人がいない東さんが隊長だ。
無理ゲーにも程がある。

「おい」

そんな東隊の人がなんで目の前にいるんだろう。

「こんにちは、二宮さん」
「お前、東さんといつも何話してるんだ」
「とても有意義なことを教えていただいてます」
「話の内容だ!」
「そうですね……いつもは狙撃手(スナイパー)用トリガーのお話をしたりしますよ。たまに兵法のことなんかを教えていただいてます」
「……俺にも聞かせろ」
「東隊の隊員なんですから、東さんに直接お話いただいた方が良いですよ」
「俺はお前の意見も聞きたいと言っているんだ」
「ああ、じゃあ今度東さんとお話する時に二宮さんもお呼びしますね」
「……そうしてくれ」
「はい。あ、そういえば、まだ名乗っていませんでした。私、天喰波折といいます」
「二宮匡貴だ」
「はい、存じております」

貪欲な人だ。
トリオン量が多いという才能を持っていて、なお戦術を学びたいなんて。
そういえば、太刀川さんは月見さんというオペレーターの人に戦術を学んでいるらしい。
なんでも幼なじみなんだとか。
それにしてもあの人も貪欲だ。
圧倒的な戦闘力を持っていて、それでも上を目指す向上心。
純粋に尊敬する。

「悠一くんも最近開発部に篭ってるし」
「なに、俺のこと気になる?」
「わっ、悠一くん。背後からいきなり声かけないでよ」
「波折の後ろ姿が見えたからつい」

と言いながらニヤニヤしている悠一くん。

「そういえば、なんで開発部に入り浸ってるの?」
「うーん、新しいトリガー作ってる」
「なんで?」
「弧月じゃ太刀川さんに勝てないから」

と、キッパリ言う悠一くん。

「勝ちたいの?」
「男は勝負って名のつくもんは全部勝ちたいんだよ」

ドヤ顔が似合う人って私の知ってる人じゃ悠一くんと太刀川さんくらいだと思う。

「へー」
「興味なしか……」
「ああ、それと最近、悠一くんがセクハラするってオペレーターの人から聞いてるんだけど」
「げっ」
「悠一くんと仲がいいと思われてるから私に非難が来るんだけど」

昨日は沢村さんから苦情を聞いた。

「え、俺ら仲良いじゃん!」
「セクハラする人とは仲良くなってない」
「ひでえ!!」


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