その手は桑名の焼き蛤
「訓練生のオリエンテーションの補佐?嫌ですよ」
「そこを何とか!」

東さんがどうしても外せない用事があるとかなんとかで、私に白羽の矢が立った。
まあ、補佐という形だからそんなに気負わなくていいが。

「誰だって年下に指導されるのはいい気がしませんから」
「東直々の頼み事なんだが……」
「うっ」
「食堂の無料券も5枚付けるぞ」
「……ご飯に釣られたわけじゃないですから」
「やってくれるか!」
「仕方なく、です」

ご飯に釣られたわけじゃないから!!(大事なことだから2回言った)

「あれ、ここどこだ」
「訓練生ですか?」
「あ、うん」
「私もそっちに用事があるので案内しますよ」

無駄に広いよな、ここ。

「まずはここで話を聞いてから訓練場に移動しますのでここで待っていてください」
「ありがとう。あ、名前聞いてもいいか?」
「天喰波折です。じゃあ、私は用事がありますので」

蜂蜜色の綺麗な髪の子だった。
目は猫みたいで人懐っこそう。
忍田さんが檄を飛ばした後、訓練室に移動する。
そして、いきなり仮想のトリオン兵と戦う。
本当にいきなりだな、これ。

「あ、さっきの子だ」

射手(シューター)か。
最近、銃手(ガンナー)ってポジションができたからか、あんまり人気ないと思ってたのに。

「アステロイド大きい……え、あれアステロイド?」

アステロイドの大きさで、彼がかなりのトリオン量を有していることが分かる。
生まれ持った才能怖い。
あんだけトリオン量があればサイドエフェクトもあったりするんだろうか。

「荒削りだけど、思い切りの良さがいい感じですね。あの子」
「波折もそう思うか?」
「ダイヤの原石ってあの子みたいなことを言うんだなぁと思いました」
「波折にここまで言わせるなら将来が楽しみだな」

忍田さんがニッコリと笑う。

「……まあ、育て方次第ですよ。忍田さん」
「一緒に頑張ろうな」
「嫌ですよ。私はこれっきりです」
「場の雰囲気に流されてくれるかと思ったんだが……」
「その手は桑名の焼き蛤です」
「古いな」
「え、そうですか?」

ジェネレーションギャップかな?




1/24
prev  next
ALICE+