その名も
「新しいトリガーができたんだ!」

玉狛支部に泊まっていた日の朝一番に悠一くんは来た。
正しくは、私の部屋には鍵がかかっていたから激しくノックされて起こされた。

「その名もスコーピオン!波折、模擬戦しよう」
「太刀川さんとじゃなくていいの?」
「波折で試してから!」
「その言い方は酷いや。というか、私はどんな武器かも知らないのはズルいよね」
「あ、それもそーか。まあ太刀川さんには教えないけど!」

というと、悠一くんはスコーピオンについて軽く説明してくれた。

「つまり。伸縮自在、スピード重視だけど戦闘スタイルによって使い方も自由ってこと?」
「さっすが波折。察しがいいね」

なるほど。
これは悠一くんの強みを最大限に生かすトリガーだ。

「とりあえず感触を確かめるためだけだし、1回でいいでしょ?」
「うん。いいよ」

説明されたと言っても私は未知のトリガーを相手にしているのに対し、悠一くんは自分も使ったことのあるトリガー相手だ。
悠一くんに歩があるのは当たり前。
私はあっさり負けてしまったのだった。

「分かっていたものの、負けたのが悔しい……」
「いや、でもやっぱり波折はすごい。途中、スコーピオンの欠点に気がついたでしょ」
「……なんとなく、だよ?」
「うん。でも、けっこう危なかった」
「悠一くんはお世辞言うのが上手だね」
「お世辞じゃないっての。まあ、波折にも勝てたし、これは太刀川さんともいい勝負ができそう」
「それはいいんだけど。私さぁ、昨日は夜勤だったからまだ眠たいんだよね」
「あ、無理やり起こしてごめん」

次の日休みだからって夜勤を入れたら、朝早くに起こされたんだもん。

「いいよ、別に。最初にスコーピオン見せてくれただけで嬉しいから。それじゃ私はもう1回寝ます……」
「なんか、もう睡魔が襲ってるな」
「黙ってると、すぐに意識飛ぶ」
「いきなり起こした俺が悪いけど、もう寝よっか」
「うん……」

二度寝して起きた後、歯磨きをしているときにまた悠一くんに突撃されることを、この時の私は知らない。

「勝ったー!!!」
「うん、あの歯ブラシが喉に詰まりそうだったから突撃は止めて」
「え、あ、ごめん」


1/24
prev  next
ALICE+