言わぬが花
最近知ったことだが、悠一くんと三輪くんはすこぶる仲が悪いらしい。
悠一くんは三輪くんに話しかけるけど、三輪くんが敵意むき出しで接するものだからコミュニケーションがとれない。
あと、ボーダーは3つの勢力に分かれているらしく、城戸さん派閥と忍田さん派閥と林道さん派閥または玉狛支部派閥があるらしい。
城戸さん派閥は近界民絶対殺すマンで、林道さん派閥は近界民にもいい奴いるぜっていう設立当初の方針のみんな古株で、忍田さん派閥はそうは言っても攻めてくる奴はお帰り願おうぜっていうグループだ。

「お前どの派閥?」
「その言い方はどうかと思うんですけど」
「どうせ玉狛だろ?」
「私が悠一くんや小南ちゃんと違う派閥に行くと思います?」
「だよなあ。あ、ちなみに俺、城戸司令派だから」
「じゃあ、私たち敵になっちゃいますね」

と言うと

「あれ、全然驚かねーな」

と太刀川さんは首をかしげた。

「太刀川さんが忍田さんの弟子だって言っても、太刀川さんってガンガン戦いたい人じゃないですか。忍田さんの考えの『攻めてくるなら攻撃するのはやむを得ない』ってのとは根本的に違います」
「お前、本当に俺より年下か?」
「この格好が目に入りませんか?中学の制服ですよ」

と、太刀川さんの目の前でくるりと回ってみせる。

「お前なら年齢詐欺してたって言われても俺は信じる」

いや、確かに精神年齢詐欺はしてるけど。

「話変わるけど。俺さあ、隊を組もうと思ってるわけ」
「へーおめでとうございます」
「おい、ちゃんと聞けよ」
「聞いてます、聞いてますってば」
「なんか新人にすごい奴いるらしいからソイツ仲間にする」
「そうなんですか」
「今から話しに行くから、お前も来い」
「えっ」

腕を掴まれて逃げられない。
脳筋ゴリラかな?

「お前、出水公平だよな」
「そうだけど。って波折さん!」
「あーあのときの」
「なんだ、お前ら知り合いか」
「この子が入隊式した時のオリエンテーションの補佐したんですよ」
「マジか。そういや、忍田さんが1回だけ天喰に手伝わせたとか言ってたな」

あの後、食堂の無料券貰ったけど、手伝ってくれたお礼だと言って串カツ奢ってくれた。
私は忍田さんには絶対逆らわない。

「俺びっくりしましたよ!めっちゃタメ口で話してた子がいきなり壇上に立つんですもん」
「天喰。お前、名前名乗らなかったのか?」
「名乗りましたよ。あ、でもこの子の名前聞いてなかった。名前聞いてもいい?」
「出水公平です!」
「出水くんね、よろしく」
「よろしくお願いします!」
「俺、蚊帳の外かよ」

と太刀川さんがしょぼくれる。

「あ、すみません。で、俺に話ってなんですか?」
「出水、お前B級に上がったら俺の隊に入れ」
「波折さんもこの人の隊に入るんですか?」
「私は違う隊に入ってるよ」
「何なの、お前天喰と同じ隊に入りたいの?」
「どうせ入るなら綺麗なオネーサンと一緒の隊がいいです」
「お前、正直過ぎるだろ」

出水くんはお世辞が上手いな。

「俺の隊に入ったら、好きなだけ戦えるぞ」
「好きなだけ?」
「あと隊服ロングコートにすっから」
「……入ります!!」

そんな理由でいいのか!?

「波折さんがいないことを差し引いても、アンタの隊は面白そうだ」
「あ、俺も名乗るの忘れてた。俺、太刀川慶」
「総合ランキング1位の!?」
「あ、それは知ってたか」
「俺、凄い人に声かけられてるんじゃ……」
「まあ、太刀川さんは凄い人っちゃ凄い人ですよね」
「それ褒めてんのか?」
「褒めてますよ、戦闘に関しては」

この人の隊に入ったことによって、この人の学業面のせいで頭を悩ませることになることを、出水くんは知らない。
それに、言わぬが花ってよく言うし黙っておこう。

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