不器用な私たち
「悠一くん話そう」
「そろそろ来るかなって思ってた」

私たち、お互い不器用だから言葉にしなくちゃ伝えられないんだ。

「私、最上さんの黒トリガー争奪戦辞退したよ」
「知ってる」

たぶん視えてしまったんだろうな、と思う。

「悠一くんが最上さんのことを大事に思ってるのは知ってる。だから、悠一くんに最上さんの黒トリガーを持っていてほしい。大切にしてくれる人じゃないと、嫌だから」
「まだ俺が貰ったわけじゃないんだけど」
「悠一くんは勝つよ。絶対勝つ。誰にも負けない」

思いの強さだけで、勝てるとは思わない。
それでも悠一くんならきっと負けないって、私は信じてる。

「……波折、怒ってる?」
「怒ってないよ」
「でも、勝手に小南に話通したからさ」
「悠一くんが私のこと考えてくれたのかな、って思ったから怒ってはないよ。でも、私だけがチームなんて作っていいのかなって思って悩んでた」

と言うと、悠一くんはどういう意味かよく分かっていないようだった。

「でも、今日悠一くんと話して吹っ切れちゃった。私、小南ちゃんたちとチーム組むね」
「そっか」
「お前ら2人で何してんの」
「あ、太刀川さんだ」
「秘密のお話です」
「……お前らって付き合ってんの?」
「黙秘権を行使します〜」

とニヤニヤしながら言う悠一くん。
コイツ、年上で遊んでやがる。

「難しい言葉は分からねーって言ってるだろ!」
「太刀川さんが馬鹿なだけじゃん」
「お前、辛辣だな!?」
「太刀川さん、辛辣って言葉知ってたんですね……」
「天喰も何気に酷い!!」
「純粋に驚いてしまって……すみません」
「天喰は許す、迅は許さん」
「なに?ランク戦でもする?」
「お、するか?」
「……勝手にやっててください」

この人たちはいい意味で全くブレないな。

「俺が勝ったら、俺と波折に焼肉奢ってね、太刀川さん」
「はあ?じゃあ俺が勝ったら俺にコロッケ奢れよ」
「波折はもちろん俺を応援するよね?」
「焼肉食べたいから悠一くんかなあ」
「うわ、ずるい」

結局、5対5で同点だったからどちらか負けた方が相手に奢るという話はなくなった。

「もう少しで財布の中身すっからかんになるところだった」
「チッ、惜しかったか」


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