内緒の協力
「波折、小学校卒業おめでとう!!」

と最上さんが言ったのを皮切りにまばらにクラッカーの音が響く。

「あんな小さかった波折がもう小学校卒業か……」
「最上さん、その発言が既にオッサンっぽい」
「なんだと」

私の卒業祝いのパーティ一なはずなのに盛り上がってるのはお酒を飲める人たちばかり。
特に最上さんはすごく酔っていて、忍田さんに絡んでいる。

「波折、オレンジジュース飲む?」
「あ、ほしい。あれ?悠一くんがぼんち揚げ以外食べてる」
「いやいや、俺も他のもの食べるからね?」
「熱狂的なぼんち揚げ信者じゃん」
「それは否定しない」

とドヤ顔の悠一くん。

「それは置いといて、波折。いま時間ある?」
「ここで話せないこと?」
「うん」

と悠一が言うので2人で部屋の外に出た。

「……これは確定した未来じゃないけど聞いてくれる?」
「勿論だよ」
「最上さんが死ぬかもしれない」
「……え?」
「詳しいことは何も分からない。ただ、最上さんが死ぬ未来が見えた」
「悠一くん、私たちが動けば未来は変わる?」
「……まだなんとも言いきれない。けど、なにかしてみる価値はあると思う」
「そうだよ。頑張って未来を変えよう、悠一くん」
「波折も手伝ってくれるか?」
「当たり前でしょ?私は最上さんの弟子なんだから」

きつく手を握りあう私たち。

「……母さんしかいなかった俺の世界を広げてくれたのは最上さんだから。絶対に最上さんを助けたい」
「そんな言いにくいことを言ってくれてありがとう。私も頑張らなきゃ」
「うん。2人で頑張ろう」

簡単に守れるだなんて思ってないけど、後悔はしたくないから。
1人なら難しくても、2人でなら乗り越えられるかもしれない。
私は可能性を信じたい。

「そろそろ戻ろうか。最上さんにずっと絡まれる忍田さんが可哀想だ」
「そうだね」

と言って、部屋に戻ると悠一くんが最上さんに捕まった。
最上さんは『悠一はえらい、悠一はえらい』と言いながら悠一くんの頭をずっと撫でていた。

「悠一くん、幸せそう」
「波折もえらいぞ!」
「わっ!?忍田さんお酒臭いです」
「え〜?」
「都合の悪い事は聞いてないフリとか大人はズルい」
「俺も波折を撫でるぞー!」
「最上さん!?」
「俺も!」
「悠一くんも!?」

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