03.5 *



 一度だけ、何故俺を選んだのかと尋ねたことがある。

 何度も何度もサーヴァントの召喚には立ち会ったはずだ。俺以外の英霊を沢山見てきたはずだ。それなのに、何故――?

「……一目惚れだったから?」

 まるでこちらに聞き返すみたいに首を傾げて、彼女はそう微笑んだ。茶化しているのかと思い「あのな」と言いかけて――やめた。

 ……その時の彼女が、あまりにも泣きそうな顔で笑っていたから。

「……どこかで会ったこと、あったか?」

 思わずそんなことを聞いてしまい、声に出してから、そんなわけないか、と自身の疑問を心の中で否定する。彼女は俺の質問に驚いたように少し目を見開いてから――

「………………ないよ」

 そう答えて、困ったように眉を寄せた。

(――今のは、嘘だ)

 長くはない付き合いでも気づいた嘘をつく時の癖、笑ってから、視線を逸らすように目を伏せる。……ということはつまり、あいつは初めから俺のことを知っていたのだ。

ランサークーフーリン

 あいつの呼び声にどこかの誰かの声が重なる。思い出せそうで/思い出せることなどなくて、痛む頭を抑えてみたが、それで何がわかるわけでもない。

 ただ、目の前で寂しそうに笑う少女を見て――その少女が言わないと決めたなにか・・・を思い出してやれないことが、酷く悔しかった。




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