そして、次の月曜日へ「あとは……思いつかないな……」
ほとんどに斜線を引いたリストを眺めながら、ベッドに背を預ける。まだいくつかは達成できていないものがあるものの、そりゃあ、実現不可能なものもあるわけなので。
それに、今は平穏に感じるとはいえ——このカルデアは常に緊急事態ではある、そろそろ通常業務に戻らなくては、罪悪感もストップ高だ。
「こんなもんか、意外と少なかったな」
「そう? 結構勝手したような気がするけど……」
「は、自覚がねえみたいだから言っておくと、お前は普段から勝手≠セぞ」
「うるさい」
笑いながら同じ寝台に腰掛けた彼が、わずかに私の身体に触れる。そこから感じる温もりは、本当に生きている命のように感じられた。
……不思議なものだ、太陽も、火も、電球の熱も、全て熱エネルギーに変わりはないのに。なぜだか、この彼の体温のようなものが、他の何よりも私を安堵させてくれる。
「……ランサーはさ、ある? 未練」
ふと、そんなことを聞いてみたくなる。彼はほんの少しだけ眉を顰め、考えるように数秒だけ口を閉じてから、静かな声で答えを口にした。
「ない、……って言えるほどは、俺も大人じゃあなくってな。ま、未練の一つくらい残しておかないと、聖杯に呼ばれなくなっちまうかもしれねぇからな!」
「そう……それは——」
——私のこと?
「……——そうかもしれないね」
寝返りを打つふりをして、彼に背を向ける。視界に入った時計——と言っても、今までのものは23:59から動かないので、別途生活リズムを崩さないために導入された特別なものだが——を確認すると、もう夜更けと言っても良いような時間を指していた。
……明日からは通常業務に戻る。で、あれば、もうこのまま眠りについてしまうのもありかもしれない。そう思って手にしていた手帳をサイドテーブルに置こうとして——リストに書かなかった、最初の一つの願い≠思い出した。
「リスト……あと、一個だけ、ある。……やりたいことっていうか——して欲しい、事……?」
「……俺に、っつーことか」
なんだ? と問いかける彼の声が柔らかく聴こえるのは、私の浅ましい願望のためだろうか。いや、今はそれでも構わない、言いかけてしまったからには、これが勘違いでもなんでも、最後まで言い切る他ないのだから。
「あのさ、ランサー、——
次の一秒まで側ににいて」
顔を上げると、目が、合った。私の好きな、赤い瞳がそこにあった。
「……先がないなら、この世界がもうすぐ行き止まりになるなら、そこまででいいから。それまでは、私のサーヴァントとして、ここに……私の隣に、いて欲しいの」
今は、それだけでいいから——
「……仕方ねぇやつだな、テメェはよ」
ぽん、と彼の手が私の頭を撫でる。……腕で遮られて彼の表情はよくわからない。けれど、かろうじて見える口元は、私に微笑みかけているように見えた。
「んなこと改めて言われなくったって——側にくらい居てやるよ。俺はお前のサーヴァントだからな」
「——……、……うん」
恥ずかしさに目を伏せる。溢れた雫がシーツに染み込んでいくそのぬるさと僅かな不快感は、すぐにこれが現実である喜びに変わった。
——かち、かち。
どこかで時計の音が鳴っている。だが、それはもう、言うほどには怖くはなかった。
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