燃えた故郷* ——燃える街を見ていた。
燃える橋を、校舎を、屋敷を、森を——教会を、見ていた。
「……良いのか?」
「なにが?」
「こんなもん見ても、面白いとは思えないがな、って話だ」
じっ、と。懐かしい場所が燃え続けるのを見ていた私に、青髪の魔術師——キャスターのクーフーリンがそう問いかけた。
「良くなくても、再現できるのはカルデアのアーカイブにあるものだけだから」
私の見たい平和だった冬木市は、あのように小さな小国の町は、記録なんてされちゃいないだろう。
「まあ、聖杯戦争の舞台になったところだし……ちゃんと探したらあるのかもしれないけど」
たはは、と笑う私の声に、焼け落ちる木片の音が重なった。
「でも、気分的に、こっちの方が合ってはいるからね……」
「……そうかい」
失ったものは戻らない。ここは、私にとって、失ったもの≠フ象徴みたいな場所だ。
平穏なかつての姿を眺めるより、燃え尽きる様を目に焼き付けた方が、よっぽど……
「……あー! 難しいなぁ! 未練を断つって、こんなに……」
突然大声を上げる私に驚くでもなく、やはりな、とでも言いたげなため息を吐いているのが聴こえる。
「もう……何年も経っているのにさぁ」
カルデアに来てから? それとも、
言峰綺礼が死んでから?
そう聞いてくれる連れ合いもいない、ここを案内してくれた魔術師は、ただ黙って私の言葉を聞いていた。
「ねぇ、キャスター」
返事はない。
「クーフーリン」
返事は、ない。
「……
藤丸立香の、導き手」
——ほんの少しだけ、彼が顔を上げる気配があった。
「もし……もしさぁ、次があるなら……また、があるなら——そしたら今度は、私のことも導いてくれる?」
願い、か。祈り、か。それとも……
自分でもよくわからないままの言葉を彼にぶつけている。知るか、などと、まさか言い捨てられないだろうかと不安になりながら返事を待っていると、先ほどより長く重いため息の後に「馬鹿か」と簡潔な罵倒が飛んできた。
「……お前には、もう
あっちの俺がいるだろうが」
「——……、あ、はは……ふふっ、そうだね……」
笑い話でも、冗談でもないというのになぜか笑いが込み上げる。そうだ、確かにな、両手とも引いて欲しいなんて、そんなのは流石にわがままらしい。
「なるほど、ふふ、そうだね……灯台下暗し、隣の芝は青い……もう手にしてるものの価値を、ちゃんと理解しないとね」
「ああ。……本当、欲張りなやつだよ、お前さんは」
そうか、そうか。私の手には、まだ残っているものがあるのだ。——ならばきっと、この旅も……この度こそ、私は間違えずに終えられるのだろう。
clap!
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