『本物と偽物』

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 シュミレーターに必要な情報を打ち込むだけ、それだけ。
 ただそれだけで、それは私の目の前に現れる。

「来たのか」

 目の前で笑う懐かしいその人に、私は渇いた笑いをこぼす。

「あ、はは」

 ーー全部、全部、偽物だ。

 こんな虚しいことはもうこれで終わりにしよう、幾度目かの悔恨に、私は目を伏せた。