『指輪』

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「左手の薬指はあけておけ」

 彼は脈絡もなくそんなことを言い出した。今はそうするのが一般的なんだろ、なんて言葉と共に。

「それは……」

 意味なんて聞かなくてもわかるけれど、それでもどうしても聞かずにはいられなくて。

「ーー先約だ」

 そんな私に微笑みかけて、彼は優しくキスをした。