『待ってた』

▼ ▼ ▼



    
 時計の針が動く音だけが、私の鼓膜を揺らしている。
 もう、夜も遅い、いつもなら……そう、いつもなら、きっと彼はもう眠っているような時間。

「……まだ、かな」

 はぁ、と吐いた息が白い。

「……私、待ってるよ……例え、帰ってこなくても、ずっと……」

 それはとても寒いーーとある2月の話だった。