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「暗遁、暗黒沈静」
「傷口が…塞がっていく」
「光彩陸離には負けますがね…明遁術のように、治癒できる術もあるんですよ」

「さ、ナツメさんも…」
「大丈夫、これくらい自分で…」
「そう仰らずに。体力が消耗している時点で明遁術を使うのは至難の…」
「もうこれ以上暗遁術を浴びたくないの!」
「…なるほど。拒絶反応というやつですか」
「ナツメ…」

「ごめん、でも本当に大丈夫だから。放っといて」
「しかし…」
「明遁、光彩陸離」
「何度見ても素晴らしい…明遁術はあなたの為にあるような業ですね。どこでその術を会得したのですか?」
「…私は母さんが残してくれた明月の書って巻物で習ったけど…明遁術を使えるのは私だけじゃないでしょ」

「確かにあなただけではありません。明遁術は元より虹隠れの秘伝の術です。虹影を始めとした虹村一族に伝わる血継限界ですが、あなたほど使いこなしている人物を私は見たことありません…」
「そう、なんだ…どうして母さんはこの術を使えたんだろう」
「…盗んだからです」
「なっ…」
「あなたの母親は巻物を集めるのが好きでした。しかし、ある時闇の書を手にした途端、人が変わってしまい、闇隠れの里を飛び出してしまったのです…」

「闇隠れの里を飛び出したのを抜忍と看做された姉さんは、命を狙われることになりました…何を思ったのかはわかりませんが、虹隠れの里に逃げ込んだ姉さんは明月の書を盗んでしまったのです…」
「そんな…」
「そこでたまたま木の葉隠れの里の忍…あなたのお父さんと出会い、命を救われたのですが…闇の書を持っていた姉さんは呪いを受け、享年十八という若さで亡くなってしまいました」
「呪い…?どんな呪いだったの」
「子を成せば死ぬという呪いです」

「子どもって…まさか私のこと?」
「ええそうです…明遁術を盗んだ親から生まれたあなたは呪いの子として、木の葉の里に誕生しま…」
「違う!勝手に決めつけるな!」
「え…」
「ナツメは呪いの子なんかじゃない…!」

「ネジ…」
「そうよ!ナツメさんは立派な木の葉の里の忍だわ!だってお父さんが木の葉の里の忍なんでしょう?明遁術だって闇を貫くし、未来は明るいわ!」
「なるほど…あなたは母親と違って素敵な仲間に囲まれたようだ」
「本当だね…抜忍として命を狙われた母さんとは違って、私には素晴らしい仲間がこんなにいる」
「ナツメさん…」

「私にはもったいないくらいだよ…」
「そんなことありません!ナツメさんだから、一人ぼっちじゃないんだと思いますよ」
「そうだね…ありがとう、サクラちゃん」

「さ、今日はここで休んでいってください…」
「ねぇ、どうしてここまでしてくれるの?」
「やはり、貴女が姉さんの子どもだからー…かもしれませんね」