06

「ねぇ、ナツメは?」
「そういえば、見てないな…」
「全く、あの子ったらどこいったのかしら…」

もう少しで葬式が始まる。というのに、ナツメの姿が見当たらない。

「ちょっとネジ!どこ行くの?」
「あいつを探してくる…」
「あたしも行く!」

テンテンの言葉にきょろと当たりを見回したネジは列を抜け出した。そんな彼の背中を慌てて追いかけるテンテン。

「開いてるわね…」

ネジが真っ先に向かったのはナツメの住むアパートだった。テンテンがドアノブに触れると、鉄の音を響かせながら開く玄関。

「ナツメ、いるんでしょー?」

ゆっくりと玄関を開けると、部屋の中は真っ暗だった。そう声をかけるテンテンの横をすっとネジが通り過ぎていく。

「入るわよーって…ナツメ」

とりあえずリビングを見てみたがそこには誰もいなかった。となると自室だろうか。と方向転換したネジの後を追いかけるテンテン。そしてまた、彼女が声をかけながらドアを開けるとそこにはナツメが蹲っていたのだ。

「もう、何やってるのよ!電気もつけないで!もうすぐお葬式始まるわよ?」
「…行きたくない」
「何言ってるのよ!三代目、待ってるわよ…?」
「…何もできなかったのに?」
「え…」

電気もつけないで。一人ベッドの上で泣いていたらしい。顔を上げようとしないナツメにどこか気を遣いながら声をかけるテンテン。

「お爺様は私達を守ってくれたのに、私達はお爺様になにもしてあげられなかった…」
「ナツメ…」
「それなのに…私はお葬式に行ける資格なんてない。お爺様に、会わせる顔なんて…っ、」
「ちょっ、ネジ…!」
「何が資格だ。お前はあの時、任務に出ていたんだろう」

すると、ぽつりぽつりと呟くナツメ。どうやら落ち込んでいるらしい。三代目を失ってしまったことに割り切れないでいるナツメの胸ぐらを思い切り掴んだのはネジだった。

「そうだけど…」
「忍はどのような状況においても感情を表に出すべからず。任務を第一とし、何事にも涙を見せぬべし…」
「…!」
「三代目の教えを忘れたのか?」
「…」

それでもナツメは俯いたままだ。ネジの言葉にお爺様の声が蘇ってくる。ナルト達より一個上のネジ達もまた、彼らと同じように三代目の教育を受けているのだ。

「命懸けで里を守った三代目を侮辱するつもりか、お前は…!!」
「違う…!それだけは、違う…」
「だったら立て。まだ間に合う…」
「ほら、ナツメ…いきましょう」
「うん…」

命懸けで大蛇丸と戦った三代目は英雄だ。しかし、そんな彼に対してなにもしてあげられなかったことに後悔しているだけで、侮辱しているつもりはない。そう顔を上げると、彼女の胸ぐらを掴んでいたネジは手を緩めた。

「この度の銭湯で命を落とした三代目火影、並びに犠牲者を弔うための葬儀を行う」

ついに始まったお葬式。ナツメの隣にはアスマと紅もいる。こんな形でお爺様を見送ることになるなんてー…と俯いていると、ざぁぁと雨が降り出した。

「ネジ…」
「…」
「さっきはごめんね…」
「…お前に足りないのは冷静さだ。三代目も心配していたぞ」
「うん…」

各々思いを馳せながら死者に弔いの花を捧げる。無事に葬式が終わってからネジに駆け寄るナツメ。

『ネジよ、ナツメのやつはどうじゃ?』
『どう、とは』
『クラスでうまくやっているか?』
『…浮いていますね。途端に点数を落としてやっぱりこのザマかと笑われています』
『そうか…』

ネジの脳裏では三代目の言葉が蘇っていた。''三代目の孫だからと''いう理由でレッテルを貼られ、途端に点数を落としたナツメをライバルだと思ったことは一度もない。

『お主はあの子と点数を競い合っておったのぅ…』
『…お見苦しいところを』
『よい、時にライバルというのも必要じゃ。だからのぅ、ネジ…』
『は…』
『ナツメのことをこれからも気にかけてやってくれんかのぅ…』

ただ、敵視していただけだ。天才日向ネジと謳われた自身の点数に追いついてきたから。どんなやつかと思えば、窓辺の席であくびばかりしているアホ面をした能天気な奴だったことにがっかりした印象が強い。

『なぜオレが…』
『ライバルとして、あの子の目を醒させてやってほしいのじゃ』
『別にライバルになったつもりは…』

そんな奴をライバルとして認めたわけではないー…が。急に点数を落とされると張り合いがなくなってしまう。これをライバルというのだろうかとネジは内心違和感を覚えた。

「あ…」
「雨が…」
「上がったね…」

ナツメが点数を落とすと当時担任だった先生も慌てていたことを思い出した。すると、すっと晴れ渡った青空。ナツメとネジがふと顔をあげると、心の涙は水たまりとなり、もうすっかりと蒸発してしまった。