"君を励ましたい"





彼女の様子が変だった。

メシの前には彼女が一番乗りでダイニングに来て、2人で過ごすのが日課になっていた。彼女はいつも料理をする俺の手元を楽しそうに見ている……いや、たぶん願望も混じってるな。

会話の中で、嬉しそうに口元を緩ませたり、少し悲しそうに眉を下げたり、いたずらっぽく笑ったり。コロコロ変わる表情が可愛くて、楽しくて、たまらなく愛おしい。

今朝はコーヒーだけで済ませ、昼メシはクルーと共にシーフードパスタを食べていた。一口は小さいが、しっかりと完食してくれて「美味しかった、ごちそうさま。」と、空になった皿をわざわざ俺のところまで運んでくれた。美味しかった、その言葉がやけに嬉しくて、思わず味の感想を求めてしまいそうになったが、彼女は昼寝をすると言ってそそくさと女子部屋に帰っていってしまった。シーフードが好きなのか、クリームソースが好きなのかはわからない。でも、"このシーフードパスタは彼女に美味しいと言われた"、それだけで今日の料理は特別なものになった。


晩メシの準備をしていると、彼女が水を貰いにきた。表情は暗く、いつもならまっすぐに俺を見てくれる瞳は、俺を映すことなかった。俯いた顔から覗いたその目元は、少し赤みを帯びているようにも見える。

「何か、あった……?」

彼女が涙するような出来事があったのか。それも思い過ごしかもしれない。勘違いならそれでもいい、思い切って問いかける。俺は君の味方だ。もし苦しいなら、力になりてェ。

彼女は目を見開いて、俺をまっすぐ見た。その口元はきつく結ばれていて、今は話す時ではないと悟った。無理に言葉を引き出すことはせず、本来の予定だったシャワーへと促す。

また後でコーヒーを持っていこう。それから、スペシャルなデザートも用意しよう。彼女が大好きなコーヒーを使ったケーキ、ティラミスなんか良さそうだ。どこかの言語で、"私を元気づけて"という意味があるらしい。

___君の笑顔を、また見たい。


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