03.償いの旅立ち

「……大変なことをしてくれたな」

村に雨が降り注ぎ、燃え盛る炎を沈めていく。
だがそれで焼けた家が直る筈はなく、そこからは黒い煙が上がるだけだった。

怪物の正体は、マーブルという名の牧場の培養体だった。
彼女はロイドらと接触したせいでフォシテスらに目をつけられ、2人への報復の為にあんな姿にされたのだ。

結局あの後、一時的に自我を取り戻していたマーブルがフォシテスを道連れに自爆するといった経緯で、戦いは終結した。
残ったのは彼女に寄生していたエクスフィアと、住まいを無くし行き場を無くした村人だけだった。

「見ろ、この惨状を……! お前のせいだ!」

村長に言われ、返す言葉も無く謝るロイド。
それでも怒りの収まらない男は、遠回しに村から出ていく様に言った。

それに反発したのはジーニアスだった。
ロイドは悪くない、本当に悪いのは自分だと。

だがそんな2人に村長が下したのは、やはり追放処分だった。
2人はそれを黙って受け入れ、皆に背を向けて去って行く。

それを引き留める事もせず黙って見送ったカーノは、数秒間目を閉じ、それからゆっくりと開けて、残った村人達に向けて口を開いた。






「……ロイド、ジーニアス」

村から出て暫くして、少年達は名を呼ばれ足を止めた。

振り向けば、そこに居たのは声から予想した通りの人物で。
先程の事もあり2人は一瞬体を強張らせたが、さっきのような恐ろしさは感じなかったので、少しだけ胸を撫で下ろして気まずそうに目を背けた。

カーノはそれに溜め息を吐いて、傍まで来るとその頭を軽く小突く。

「馬鹿野郎」

「……ごめん」

「ごめんなさい……」

俯いたまま微かに声を震わせる2人に、カーノは続ける。

「何で俺があんなに怒ったか解るか?」

「……約束を破って、牧場に行って……村を、あんなにしたから……」

ゆっくりと答えるロイド。
しかし、そうじゃないと返され、ジーニアスと2人揃って顔を上げた。

「牧場に行って、もし捕まってたら……お前らどうなってたと思う?」

その質問に2人は答える事が出来なかった。
ぼんやりと想像は出来るものの、実際に中でどのような事が行われているのかを知らなかったからだ。

「教えてやろうか。始めにエクスフィアを要の紋無しで付けられて、24時間休み無しで働かされ続けるんだ。少しでも手足を止めれば鞭で叩かれて、反抗すればエクスフィアを無理矢理剥がされて化け物にされる……今日のあの人みたいにな」

言われて、さっき見た光景が浮かんで、ロイド達は知らずと拳を握りしめる。

「常に見張られ行動を制限され、自由も安息も無い。飢えているのは当たり前、明日を生きられるのかもわからない……そんな生活が、下手すれば一生続くんだ」

そこで2人は、自分達と同じように、相手の声が震えている事に気づいた。

「わかるか? 一歩間違えてたら、お前達もそうなってたんだよ。もう二度と、戻って来れなくなってたかもしれないんだぞ」

そこまで言い終えると、カーノは見上げてくる小さな身体に倒れ込むように抱きついた。

そして絞り出したような声で、一言。

「無事で良かった……!」

それを聞いたロイドとジーニアスは、張りつめていた糸が切れたように泣き出した。
片や嗚咽を漏らしながら、片や大声を上げながら。

何でそんなに詳しいんだとか、あんたも泣いてるんじゃないかとか、言いたい事は沢山あったが、色んな感情でいっぱいいっぱいだった2人は、自分達を受け入れてくれる青年に縋りついて、暫くそうして泣き続けた。
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