09.終わらぬ輪廻



「………ロイド!!」


「うぉっと!」


目に光を取り戻したカーノは勢いよく立ち上がった。その反動でゼロスが転ぶ。

「いててて…、急に立ち上がるなよ〜。」

「え?

……あ、悪い!」

ゼロスを助け起こして辺りを確認する。見れば仲間達が交戦する姿が見えた。

「何だ、どういう状況だ?」

「おいおい記憶障害かぁ?
さっき頭でも打ったんじゃねーの。」

「さっき?」

「急に出てきたオッサンに叩きつけられてたでしょーが。」

言われて、ようやく思い出す。

(そうか、クラトスに急襲されて、輝石を見られて……、)

首にある輝石に指を這わせ、奥歯を噛み締める。

(…せっかく再会出来たのに、狙いはこんな石ころか。)

次に会うことがあれば敵だと覚悟はしていたつもりだった、けれど顔を見た瞬間、銃にかけた手が緩んでしまった。

覚悟が足りていないのか、結局皆に迷惑をかけているじゃないか。

「お?どうした?」

歩き出したカーノにゼロスも付き添う。
その足は皆の方に向かっていた。

「俺のせいで皆に怪我はさせたくない。」

「戦うつもりか?
やめとけよ、さっき手も足も出てなかっただろうが。」

ピタリ、と足が止まる。

悔しいが言い返す言葉もない、でもだからと言って黙って見ていることなど出来ない。

下ろしていた銃を構え、遠くにいる男に照準を合わせる。
周りに居る者には当たらないように気を配りながら、深く息を吸って、吐いた。

心で認められなくても、頭では理解出来るはずだ。


「…あれは、敵だ。」


ガウン!!と銃声が鳴り響き、弾丸が放たれる。
弾は木々を抜け、真っ直ぐにクラトスへと飛んだ。

だがその弾は剣で弾かれ、木の幹に着弾する。

再び静かになる森、驚きこちらを見る仲間達の先で、クラトスもまたこちらを見ていた。

そしてその口元が、言葉を紡ぐ。


「…そうだ、それでいい。」


「……え?」


思わずスコープから目を離す。声は聞こえなかったが、確かにそう言っていた。

隣でゼロスが不思議そうにしていたが、何も返すことが出来なかった。


(何、なんだ、本当に……、)


あれは敵だ、それで間違いはない筈なのに、何であんな。

まるで攻撃されることを待っていたみたいな―…、


(……どっちなんだよ………。)


撃てば少しは割り切れると思ったのに。結局また悩むだけかと、やり場のないモヤモヤにぐしゃぐしゃと頭を掻いた。






「雇われたとはいえ突然襲って申し訳なかった。」

あの後、クラトスはそれ以上何もすることはなく立ち去り、残った敵は不審な男のみとなった。

だが男は動く気配を見せず、先程までの気迫が嘘のように大人しくしている。

「もう私は戦うつもりはない。ただ……、
その娘と話をさせてもらいたい。」

その娘、と指名されたのはプレセアで、ジーニアスは冗談じゃない!と怒鳴る。
だが先ほどの戦いっぷりを見たからか、ロイドの背に隠れながらだったが。

「! エクスフィア…!!

お前も被害者なのか…!!」

プレセアの胸元に光る石を見て、突然男の表情が変わる。
被害者とは一体なんのことか、事情がありそうだとリフィルが問い詰めた。

「私はリーガル。
囚人だったが雇い主に神子誘拐を依頼された。」

やはり、とこの場に居る大半の者が予想していた正体に納得する。
問題はコレットの誘拐を依頼したその雇い主なのだが、それについて聞けば「わからぬ」と返された。

「中継役にそう言われただけなのだ、報酬はエクスフィアの密売を中止すること……。

頼む、その娘…、
プレセアと話をさせてくれ。」

「けどなぁ…」

突然の申し出に困惑しロイドが頬を掻く。先程まで敵だった相手とそう易々と仲間を2人きりには出来ない、といったところだろう。そんなロイドを見てゼロスが提案する。

「ロイドくん、とりあえず捕虜にしておけよ。」

「捕虜?」

ゼロスの言い分はこうだった、リーガルはプレセアに用があるのだから、話が出来るまで自分達には危害は加えないはず、ならば一緒に連れていけば戦力になるのではないか。

ジーニアスやロイドはいまいち納得が出来ないといった様子だったが、リフィルやしいなはゼロスに賛成らしく良いのではないかと言った。

「そうだなあ…、
なぁ、兄貴はどう思う?」

「えっ?」

いきなり話を振られて、意識を違う方面へ飛ばしていたカーノは、少し考えた後「大丈夫なんじゃないか」と答えた。

「これだけ人数が居れば、もしまたコレットちゃんを狙うようなことがあっても防げるだろ?」

「まぁ…それもそうか。」

ロイドは一度うんと頷いて、リーガルにそれでいいかと尋ねた。

「良かろう、
我が名とこの手の戒めにかけて、決して裏切らぬと誓う。」

その言葉が嘘か信かはこれから旅をしていけばわかるだろう、一時的かもしれないが、皆は仲間としてリーガルを迎え入れた。




「で、まぁおっさんはいいとしてよー…、

アンタはいつになったら復活するんだ?」

「へ?」

時間をかなり消費してしまったからと、少し急ぎ足で目的地へと向かう最中、ゼロスにそう言われて横を見る。

「さっきからず〜っと上の空。
呼び掛けても反応は鈍いし。」

「そ、そうか?
悪いな。」

「俺様は別にいいけど、皆心配してるぜぇ?」

聞いて、そういえばさっきのことについて皆に謝罪していなかったなと、一度足を止めて頭を下げる。

「さっきは俺のせいで、…ごめん。」

「何言ってんだよ、兄貴のせいじゃないだろ?」

「そうそう、あっちが勝手につっかかって来たんだしさ。」

「カーノに怪我がなくて良かったよ!!」

誰一人責めることはせず笑いかけてくれる、それに感謝しながらも、内心ではやはりまだクラトスの事が気にかかっていた。

「結局アイツは何なのよ?知り合いみたいだったけど。」

何も知らないゼロスの問いに、皆答えることが出来ず俯く。
仲間だったと、そう前までなら言ったかもしれないが、今ではそれも自信が無い。

でも最後にクラトスが言った言葉は……、


「…さあ、止まっている時間はなくてよ。
先を急ぎましょう。」

「え、俺様の質問無視?」

「うるさいねぇ、どうだっていいだろ?」

ほら行くよとしいなが背を押して無理矢理ゼロスを歩かせる。そして立ち止まっていたカーノの腕を、ロイドとジーニアスが掴んだ。

「行こうぜ、兄貴。」

「早くしないと暗くなっちゃうよ!」

元気付けようとしてくれているのか、明るく腕を引っ張る2人に微笑を返す。
これ以上こいつらに、皆に迷惑をかけちゃいけない。何度もそう思ってきたのに、その度にまた同じことを繰り返す。

辛いのは自分だけじゃないんだ、それでも皆はそれを表に出さずに、明るく振る舞いこちらに気を遣ってくれている。

普通ならば逆の筈なのに、最年長が聞いてあきれるなと1人頭を垂れた。





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