01.始まりの神託

だが四人は、特にその先頭に立っていたカーノは、聖堂に着いてすぐに、やっぱり連れてくるんじゃなかったと思う羽目になった。

なぜなら彼らが到着して始めに見たものは、聖堂に続く階段の下で血まみれになって倒れる祭市長の姿だったのだから。

「……っ! 祭市長様!!」

その姿を見たコレットがすぐさま駆け寄ると、祭市長はか細い声で逃げろ、とだけ伝えて、息を引き取った。
それを見たカーノは、さっき思った事を、今度はわざと声に出して言った。

「……やっぱり来るんじゃなかったな。戻るぞ」

「そんな!」

「ま、待ってくれよ兄貴!」

「待たない。ここは危険すぎる。祭市長が今言っただろう、逃げろって」

「でも……!」

カーノはどうしても納得のいかない様子でその場を離れようとしないロイドの腕を掴んで、無理にでも連れ帰ろうとする。
しかし、それも次に出たコレットの言葉によって阻止される事となった。

「待って! 待って下さい! 上にはまだお祖母様が居るんです!」

「!!」

言うなり階段を駆け上がっていくコレットに、ロイドが即座に反応する。
掴まれていた手を振り払い、コレットの後を追って階段を登る。

その様子を見ていたカーノは、小さく舌打ちをして、渋々背負っていた銃を抱えその後を追った。

そうしてほぼ三人同時に登りきると、そこにはやはりコレットの祖母であるファイドラが居た。
ただし彼女一人ではなく、その周りには兵士の格好をした男が二人立っており、その姿を見たカーノは、心臓を跳ね上がらせた。

「────っ!!」

記憶の中に残る姿と目の前の兵士が重なって、銃を握る手に知らずと力が籠もる。
だがその兵士がロイドに切りかかった事で我に返り、直ぐに応戦する。

既に刀を交えていた敵は仕方がないのでそのままロイドに任せ、残ったもう一人に標的を定める。
どうやら狙われているらしいコレットの前に立ち、庇うように相手の攻撃を防ぎ、隙を突いて懐に銃口を叩き込んだ。

それだけでは流石に倒れてはくれなかったが、相手を怯ませるには充分だったらしく、それ以降は攻撃する素振りを見せなかった。
しかしそれで終わったかと言えばそうでも無く、何やら仲間らしい者の名を呼ぶと、神殿の中から巨人としか言い様のない大男が姿を現した。

立派な神殿の入り口とほぼ同じ大きさのその男に、追い付いてきたジーニアスを始め、カーノ達四人は少し、というよりカーノ以外の三人はかなり、戦意を殺がれた。

だがここで負ける訳にはいかないと必死に戦うも、ロイド達三人はあまりの体格差から繰り出される攻撃を避ける事しか出来ず、カーノは銃を構えたは良いが、そんな三人に気を取られ意識を集中出来ず、下手をすればロイド達に当たってしまう事もあり、なかなか引き金を引けないでいた。

そしてそんなギリギリの攻防が長く続く訳もなく、すぐにピンチは訪れた。

足手まといにならぬ様にと前に出て攻撃を当てようとしたコレットが敵の目に止まり、武器を弾かれ叩き潰されそうになったところをロイドが庇う。
が、それも一瞬で、すぐに力負けして吹き飛ばされてしまう。

敵の標的はロイドへと移り、背中から体格と同じく大きな剣を取り出し振り上げる。
そこまでをスコープ越しに見ていたカーノは、正直とてつもなく焦っていた。銃を握る手は汗ばみ、歯を食いしばって狙いを定める。

外れれば最悪の事態だが、やらなけくても結果は同じだ。
意を決して引き金に添えた指をゆっくりと引いて、撃とうとした瞬間────

敵のものでも味方のものでもない人物の背中が、スコープ越しの視界を覆った。
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