09.終わらぬ輪廻


(……いや、いやいやいや、おかしいだろう。)


弾き出された人物に、違う違うと首を振る。なんであの人が出てくるんだ、なんであの人とクラトスが同じになるんだと苦悩する。

だが“相手に感じるもの”がクラトスと一番近いのはその人物で、だがその人物に対して自分が抱いていた感情はクラトスに対するそれじゃないだろうと自己否定した。落ち着け、その見解は間違ってる、それは無いだろう流石に、あったら笑うぞ。

「…どうした、大丈夫か?」

緊急事態に陥っていた脳内の叫びは声に出ていたらしく、リーガルが少し心配そうな目でこちらを見ていた。大丈夫だというが実際はちっとも大丈夫ではない。

きっと考えすぎて頭が混乱しているんだろう、今日はもう寝た方がいいかもしれない。このままでは誤った答えに辿り着いてしまいそうだと立ち上がった。

「…暫く考えてみるよ、有難うな。」

「そうか、大した力になれずすまない。」

「充分助かったよ。」

久しぶりに本音を話せたような気がする、考えることはまぁ増えたが、心が少し軽くなったなと相談相手に感謝しつつ寝室に移動した。

皆はもう眠りについているようで、小さな寝息が聞こえる。人数分ベッドがあるわけもないので、カーノは他の男性人同様空いていたスペースに寝転がり目を閉じた。





その日は久しぶりに夢を見た。

確か旅に出る前に見てそれきり見ていなかったか、まあそんなことを考えたのは起きてからだったのだが。


夢の中で会ったのは、またあの女性だった。話している時に感じる居心地の良さに、ふと過ったのは鳶色の男で。

どうしてだろう、全然似てないのに。共通点がわからない、とぼんやりとした頭で考える。


「ねぇ、カーノくん、」


相対していた女性に呼ばれ思考を一旦遮断する。素直に感情を表現出来なかった当時の俺が何、とぶっきらぼうに返せば、女性はこちらの手を取り、掌に何かを乗せた。

綺麗な黄緑色をした小さな筒のようなそれが何か分からず、ついていた留め金を開けたり閉めたりしていると、隣から小さく笑い声が聞こえた。

「…何だよこれ、ゴミ?」

「違う違う、こうするの。」

相手はその筒を取って俺の髪を一束掴むと、そこに先程の筒を着けた。

「お守り。」

「…いらねぇよ、邪魔なだけだろ。」

「まぁそう言わずに、貰っておいて。」

ね?と笑いかけられると逆らえなくなり、外そうと伸ばした手を地面に落とす。でも何で急にこんなもん渡すんだと聞けば、いつも穏やかな表情ばかり浮かべている女性は珍しく困った、というか、何かを言い渋っているような顔をした。

「……なんだよ?」

「…ううん、何でもない。」

気にはなったが、何故かそれ以上聞く気になれず、相手がまた喋りだした世間話を黙って聞いていた。

今考えてみれば、多分聞く勇気がなかったのだろう。深く関わりたくはなくて、大事な人を作るのが怖くて、相手との距離を図ってた。

でもその時には、彼女は自分にとってもう大事な人になっていたんだと、俺が気付いたのはそれから後の事だった。


いつもそうだ、大事な人が側に居ることが当たり前になって、それがどれだけ幸せなことかは、無くしてから気づく。

その時にはもう手遅れで、だからもう大事な人なんか作らないって決めたんだ。


(……ああ、そうか。)


相変わらずハッキリしない脳で、俺は幸せそうな自分の姿を見ながら、ようやく目の前の女性と例の男の共通点に気付いた。


(……同じなんだ、この時と。)


過去の傷を癒してくれるような錯覚、今度こそ大丈夫なんじゃないかと思ってしまうような存在。

大事なもの、失って気付く、それがどれだけ大切なものか。

知らないうちにまた同じことを繰り返していたんだなと、意識が闇にのまれる寸前にようやく、自分がクラトスに多少なりと依存してしまっていたのだという事を自覚した。



















It continues to
next time...





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