10.涙の数だけ固結び


「…で、そういう訳なんだけど…皆何か言いたいことはあるか?」

教皇騎士団がまた襲いかかってきては面倒だからと、皆はガオラキアの森へと移動していた。リフィル達の正体を皆に話して、カーノ達はその反応を待った。

「そんなの、2人はハーフエルフの前にあたしたちの仲間じゃないか。」

「リフィルさんもジーニアスも、会ったばかりの私を助けてくれました。
…信頼するには充分です。」

しいなとプレセアは変わらず2人に微笑みかけた。そして一番不安だったゼロスはと言うと、

「偏見は完全にないわけじゃねーけどな、今さら一緒に旅したくねぇとか言い出さねーから安心しろよ。」

と少々ぶっきらぼうながらにも非は唱えなかった。リーガルも問題はなさそうで、結果2人は元通り仲間として迎えられた。

あれだけ差別や格差がどうこうと言っていた割にすんなり受け入れたゼロスに安心し、ニコニコと笑いかけると相手は何故か気まずそうに顔を背けた。




「よし、じゃあ後はどうにかしてシルヴァラントに―……!?」

絆を深めた一行がレアバードに跨がり、次の目的へと走りだそうとした矢先、彼らはまたもや不測の事態に見舞われた。

「落雷…!?」

「…オゼットが…!」

けたたましい雷鳴と日光よりも眩しい光に視界を奪われ、次に見たのは黒い煙の柱だった。
方向から場所を特定した皆は、それがプレセアの故郷だとわかるや否や被災地に急行した。

「…ひどいな、落雷ひとつでここまでなるもんか…?」

太い幹は焼き切られ、家や店はほぼ全焼。辺りを森で囲まれていた為落石もあった用で、あちこちの道が断絶されていた。何より最悪だったのは、生存者が見当たらないこと。カーノは消火活動を続ける傍らで静かに黙祷を捧げた。

「そういえばプレセアちゃんは?」

「家の方に行ってみるって」

この有り様ではプレセアの家も恐らく無事ではないだろう、皮肉なものだが家に誰も居なかったのは不幸中の幸いかもしれない。
断絶された道を無理矢理よじ登り、なんとか着地するとこちらに向かっていたらしいプレセアと合流した。

「急いで来てください!」

「どうした?」

「瓦礫の下に人が!」

「!」

わざわざ言いに来るということは生きているのだろう、急いでプレセアの案内した場所に向かうと、確かに倒壊した家屋の下で頭と腕だけを出した状態で、小さく呻いている人の姿を見つけた。

「おい!大丈夫か!?」

重い木材を皆で慎重に、かつ迅速に退かせて、下敷きになっていた人物を助け起こす。それはまだ小学生ぐらいであろう少年で、身体中に痛々しい傷を負っていた。

「…先生!」

「わかっていてよ!」

骨折はしていないのか、少年は自力で上体を起こした。リフィルが杖を翳して短い呪文を唱えると、淡い光が傷口を覆う。

「……あなたがたは…」

「大丈夫か…?一体何があったんだ。」

ロイドが身を屈めると、少年は怯えたように肩を跳ねさせた。体が小刻みに震えている。

「ボ…ボクにもよくわかりません……、

突然天使さまが襲ってきて…、その後雷が落ちて来たんです。」

「天使ですって…!?」

天使、そのキーワードに今度はカーノが心臓を跳ねさせた。天使と聞いて思い出されるのは過去の仲間。

「羽が生えてました…、
羽が生えているのは天使さまなんですよね?」

「ああ。
……くそっ、クルシスのやつらだ…!

「…ひどい、なぜ村をこんな……」

皆が怒りを滲ませる中、カーノは複雑な思いだった。ここを襲ったのがクラトスでないことを切に願う。

「しかしよく無事だったなぁ、生き残りはおまえだけなのか?他には?」

少年は一度だけ首を横に振った。それだけで充分意味は伝わる。

「…ボクは村のはずれに住んでいたから…、
ずっと家に隠れてて、天使さまたちが去ったあとここまで逃げて来たんです。

そしたら落雷があって瓦礫に…」

「ケガはもう大丈夫?」

「あ…うん、ありがとう…」

「……あれ、もしかしてキミ…、
ハーフエルフじゃないの?」

側にいたジーニアスが唐突にそう言うと、少年は分かりやすく身を強張らせ立ち上がり距離を取った。
そうか、こちらの世界のハーフエルフは人間への恐怖心が……

「安心なさい、わかるでしょう?
あなたも私たちと同じ血が流れているのなら…」

つい先ほど皆に正体を打ち明けたリフィルが落ち着かせるように優しく囁く。少年はリフィルとジーニアスを交互に見て表情を変えた。

「…あなたたちも…ハーフエルフ…ですか……!?

で…でも!人間と一緒にいるじゃないですか……」

「だいじょぶだよ、2人は私たちの友だちだから。」

コレットの嘘偽りの無い笑顔と言葉に、ロイドも笑みを浮かべ無言で賛同の意を示す。少年はそんな2人を信じられない目で見た。

「人間がハーフエルフと友だち…?うそでしょう!?」

「うそじゃないよ、ボクと姉さんはこの人たちの仲間なんだ。」

「…この村はハーフエルフ蔑視の激しい村と聞く。
なぜこの村に隠れ住んでいたのかわからぬが…、

そのように怯えるのは無理もなかろう。」

リーガルの口調も普段より柔らかかった。少年を気遣っているのだろう、今この場に少年に襲いかかろうとする者は居ない。

「とりあえず村を出よう、…また天使が来たら大変だ。
一緒に行くだろ?」

「え…でも、ボクはハーフエルフ…」

「だーかーらー、そんなん関係ねぇって!」

「君、名前は?」

少年は少し戸惑いを見せた後、小さな声で言った。

「ミ、ミトス…です……」

「ミトスって…、」

どこか聞き覚えのある名前、もちろんこの少年とは初対面のはずだが、同名で知っている人物が居た気がする。誰だっただろうか?

「んじゃあ行きますかぁ?こっからだと一番近いのは…」

「サイバック…だけど、彼処は駄目だね。」

「あっ、アルテスタさんのところは?」

思い出そうとしている間にも次の目的地が決まる。一行はミトスに危険が及ばないようなるべく魔物を避けながら、アルテスタの家を目指した。





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