ロイドの剣が、ミトスの体に突き刺さる。
ミトスの体は花弁となって、輝石だけが宙に漂う。
しかしその背後に、ミトスの影が浮かび上がる。輝石からは心音に似た音が鳴っていた。
「クルシスの輝石がある限りミトスは生き続けます…!」
《そして…いずれは輝石に支配される。
もうおまえたちの正義ごっこにつきあうのはごめんだよ》
「…ミトス!」
覚悟を決めていたとはいえ、消え行く少年を目の当たりにしてロイドは動揺する。
《さっさと輝石を…壊せ。
でないとデリス・カーラーンは離れていく。》
「ミトス…おまえ、」
《早くしろ!
ボクも…やがてはボクでなくなってしまう。》
「ロイド…!
ミトスを助けて。」
ジーニアスは顔を赤くして、両目から涙を溢していた。ジーニアスにとっては大事な友達だったのだろう、それが例えどんな人物だったとしても。
「ミトスをミトスのままで…逝かせてあげて、
お願いだよ……」
「……わかった。」
ロイドは目を伏せて、剣を振りかぶった。
《さよならだ、ボクの影…、
ボクが選ばなかった最果てに存在する者。
ボクはボクの世界が欲しかった、だからボクは後悔しない。
ボクは何度でもこの選択をする。》
仲間たちは目を伏せたり背けたり、最後までその姿を見届けようとしていたりと様々だった。
最後にこちらを見て笑みのようなものを浮かべたミトスに、カーノは怒りの言葉も慰めの言葉も、何も言えなかった。
《この選択を し続ける》
パキィ、と音を立てて、輝石が砕け散る。
破片は花になって、ロイドの周りに舞った。
「…ここに…、
俺たちの世界に居ても良かったのに。
馬鹿野郎…」
輝石から溢れた光がロイドのエクスフィアに吸収され、二対の剣が融合して一つになる。
「…エターナルソード?」
《古き契約の主は消えた。》
剣が光を放ち、見えていた景色が見慣れた風景に取って変わる。しかし空は薄暗いままだ。
「な…何だ?
地上に戻って来たのか…?」
《新たなる契約の主よ、この剣に何を願う?》
ロイドはそれを掴み、掲げた。
「二つの世界を…、
シルヴァラントとテセアラを…あるべき姿に!」
《…しかし楔がない。
楔がなければ大地は死滅する。
元々世界は滅亡を防ぐために二つに分けられたのだ。あるべき姿に戻れば世界を支えるマナは不足する。
大地は…消滅する。》
「…っ、そんなごたくはどうでもいい!
それよりどうしたら大地を守れるんだ!」
エターナルソードが言い澱むように間を置く。
もっともエターナルソードに感情というものがあるのかは分からないが。
《二つの世界を支えるため大樹を楔とする。
大地の滅びを防ぐにはそれしかない…》
「大樹カーラーンの復活か…!」
「ロイド、急ぐのだ!
デリス・カーラーンが宇宙の彼方に飛び去る前にそのマナで大いなる実りを発芽させろ。
それが唯一の再生の道だ。」
《だがデリス・カーラーンは大地の引力圏を離れようとしている。
これを引き止めることはかつてのユグドラシル…、ミトスすら出来なかったことだ。
それでもやるのか?》
「ああ!」
《エクスフィアで強化していても体がもたないだろう…、それでも本当にやるのか?》
「…うっせぇな!やるったらやるんだよ!
やんなきゃどうしようもないだろーが!!」
「ロイド…」
揺るぎなく言い放つロイドを止める訳にもいかず、不安を消化しようと己の体を抱く。
その手にクラトスが触れ、目を合わせれば優しく微笑まれた。
「ロイドを信じろ。」
重ねられた手を握って頷く。エターナルソードがロイドの命令を承諾し、マナを大いなる実りに導く。
しかし届く前に、何かに阻まれて霧散してしまう。
「…!?
マナがはじき返されちまう!?」
「大いなる実りが…死んでしまっているんだわ…!」
「そんな…!
待て…!行かないでくれ…!」
どんどん離れていく実りに、ロイドが懇願する。
するとその想いに共鳴するかのようにエクスフィアが光だした。
「ロイド…!?」
「頼むから…っ、目覚めてくれ!!」
光がロイドを包むと、その背から翼が生えた。誰のものとも違う、白く大きな翼。
「な…、」
「ロイド…!!まって…!!」
ロイドと、それを追うコレットが、大いなる実りに向かって羽ばたく。その姿は正に天使だった。
カーノは呆然としながら、ぽつりと呟いた。
「エンジェルス計画…」
自分が、アンナさんが、妹が、街の皆が、世界中の人が巻き込まれた計画、その完成形。
「そうか、ロイド…おまえは……」
クラトスの台詞のその先は無かった。
2人で剣を握りもう一度大いなる実りにマナを注ぎ、大樹の種が地上に降りていくのを、仲間達は遠くから静かに見ていた。
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