04.それは絶望にも勝る
「ねえ! ちょっと休憩しない?」ザナルカンドを目前にしたところで、リュックが提案。
後ろには、今しがた倒したガーディアンの骸が横たわっている。
「休む必要はない、あと一息で山頂だ」
「あとちょっとだから休みたいんだってば! ……考える時間、少ししかないんだもん」
「リュック……」
「いいよ、歩きながら考えるから……」
「ほんとに……もうすぐなんだよな」
「とうとうここまで来ちまったなあ……」
それぞれが、同じ想いで道の先を眺めた。
その様子を見て、アーロンが小さく笑う。
「何がおかしいんだよ」
「昔の俺と同じだ。あの時……ザナルカンドに近づくほど、俺も揺れた。辿り着いたらブラスカは究極召喚を得て……シンと戦い死ぬ。旅の始めから覚悟していたはずだったが……いざその時が迫ると恐くなってな」
「何つうか……意外です。伝説のガードでも迷ったりするなんて……」
「何が伝説なものか。あの頃の俺はただの若造だ。ちょうどお前くらいの歳だった。何かを変えたいと願ってはいたが……結局は何も出来なかった。それが……俺の物語だ」
遠くを見つめて、アーロンは歩き出す。
皆もそれに続いて、ついに山を越えた。
目の前に広がるのは、最果ての地、ザナルカンド。
1000年前に滅んだ、伝説の都市。
地平線に沈みそうになっている夕日が、廃墟の街を橙色に染める。
「みんなホントにいいの!? あそこに着いたら2人は……」
「リュックの気持ちは、とても嬉しいんだ。でもね……もう引き返さない」
「引き返せなんて言わないよ。でも考えようよ! ユウナ達が助かる方法、考えようよ!」
「考えたら……迷うかもしれないから」
「ユウナ……」
ユウナはリュックに駆け寄って、そっと抱きしめた。
「ありがとうリュック、大好きだよ」
「いやだよ、ユウナ、そんなこと言っちゃいやだよ……」
「シドさんに、よろしく」
「いやだよ、自分で言いなよ……」
「……お願い」
「そんなこと言わないでよ……もう会えなくなるみたいでいやだよ!」
リュックからそっと離れて、ユウナは歩き出す。
終着点のエボン・ドームはもうすぐそこ。
シンと戦って死ぬか、命を惜しんで逃げるのか。答えを出さなければならない時が来たのだ。
ドームが見える場所、ここで少し休憩しようと、焚き火のための枯れ木を探しに仲間たちがばらける。
それを手伝いながら、ユノはなるべく周囲に悟られないように、一人一人に声をかけた。
とりあえず最初は、キマリ。
「キマリさん、ユウナのこと好きですか?」
前置きもせずにそんな問い。
キマリは不思議そうに首をかしげた後、答えた。
「勿論。ユウナが小さいころから、キマリは一緒に居た」
「ですよね。どんなところが好きですか?」
「優しいところ。ユウナは優しい、誰にでも優しい。でも、自分には優しくしない」
「……うん、そうですよね」
「だからキマリが、ユウナを守る。ユウナの分まで、ユウナを想う。……ユノは、ユウナが嫌いか」
「ううん、俺も大好きです」
有難う御座いましたとお辞儀をして、次の人の元へ向かう。
今度は、ワッカとルールー。
先と同じ質問をすると、似たような反応が返ってきた。
「どうしたの? いきなり」
「そりゃもちろん好きだぞ? 小さいころから見てきたしなぁ、妹みたいな感じだな」
「そうね……それくらい長い間、一緒に居るものね」
「好きなところ? そりゃあ、色々あるけどよ……芯の強いところとかな」
「どれだけ凄い人だと褒め称えられても、決して驕らない。得てきた力を、地位を、他者の為に使うことが出来る。……そういうのって、なかなかやれることじゃないのよ」
「まあ、ちょっとドジなところもあるけどな! それもまたユウナらしさだ」
自分のことのように誇らしげに語る2人にもお礼を言って、4人目はリュック。
「ユウナの好きなとこ? うーん、いっぱいありすぎて分かんないなぁ〜。そもそも歳の近い女友達ってユウナが始めてでさ。ホームにもたくさん友達はいたんだけどね、ユウナみたいな子ってあんまり居ないし……なんか友達のような、お姉ちゃんのような……あーもー、言葉じゃ説明しづらいよ〜!」
「大丈夫だよ、分かるよ」
「とにかく好き、すーっごい好き! ……だから絶対、死なせたくないの」
また助ける方法を考え始めて唸り出したリュックに、これ以上はお邪魔かなとその場を去る。
そして最後に、ティーダ。
「ティーダ、ユウナのこと、好き?」
「はっ!? なっ、なんだよいきなり!!」
自分が言えたことではないが、あまりに分かりやすい反応に笑いが零れる。
別にそういう意味で聞いたのではないのだが。まあいいや。
「最初見たときにさ、うわー可愛い〜って思って。今まで見たどの女の子より綺麗でさ。ザナルカンドに居たときは──あ、ここじゃなくて、えっと……」
「故郷の?」
「そう! って、信じてくれんの?」
「うん、流石にね」
「そっか。それでまぁ、あっちに居た頃はさ、オレって結構モテてさぁ。エイブスのエースだったし、ファンもいっぱい居て……ああ、自慢じゃなくて!」
「分かってる分かってる」
「だから、ユウナの反応が新鮮だったっていうか……まあ、オレのことなんて知らなかったんだから、当然なんだけどさ」
ティーダは夕暮れに染まる空を仰いだ。
アーロンに連れられてスピラに来た日のことが、遠い昔のように感じる。
「ここまで一緒に旅してきて、ユウナのこと見てて……辛いのに無理して笑ったり、明るく振舞ったり、強がったりしてさ。強い子なんだなーって思ってたんだ。でも本当は、強い訳じゃなくてさ。ちゃんと普通の女の子と同じで、泣いたりするんだよ。だから俺が、守らなきゃっていうか、守りたいなって……ユウナが泣きたいときに、泣かせてあげられるくらい強くならなきゃって」
「……そっか」
「あ、そういえばさ、聞きそびれてたんだけど……ユノが旅してんのって、俺のせい?」
ティーダからの唐突な質問に、何の話だろうとユノは目を丸くする。