03.焦がれ消えぬ漣
「急かして悪いな」「いえ、大丈夫です。何かあったんですか?」
「ジョゼ寺院からSOSだ。連中、魔物退治にしくじって、大変なことになってるんだとよ」
「ええ!?」
懸念していた事が当たってしまい、ユノは「ギップルは何やってんのさ〜!」と怒るリュックと共に飛空挺のタラップを登った。
アニキは「ギップルはモテるから」というかなり不純な動機でマキナ派を助けることを渋っていたが、ダチはそれを無視して行先をジョゼに設定する。
「大変なことって、具体的にはどんな感じですか?」
「わからん。かなり切羽詰まってるみたいでな、悠長に説明してる時間も無いって感じだった。普通の魔物相手なら、そう簡単にはやられないと思うんだが……」
「また召喚獣が出たのかもな」
「ジョゼの召喚獣って確か……」
「イクシオン、だね」
また召喚獣と戦うことになると思うと気が退けたか、リュック達の同胞を見捨てるわけにもいかない。
ユノは「きっとこれで最後だから」と、嫌がる己の心を説き伏せてジョゼに降り立った。
寺院の前には銃を構えたマキナ派のアルベド族らが並んでおり、リュックが通訳も兼ねて皆から話を聞く。
「どう?」
「要するに、かなりヤバいみたい」
「それはもう分かってるだろ。――どうやら、魔物に機械を乗っ取られたらしい」
「パインさん、アルベド語分かるんですか?」
「まあ、一応ね」
閉ざされた寺院の扉がガァン!と大きな音を立てて、感心していたユノは肩を跳ねさせた。
今はパインの語学力を褒めている場合では無い。
中で暴れているのだろう魔物――恐らくは召喚獣――を想像しながら、一行は歪んだ扉をこじ開けて中に入る。
寺院の中は、イクシオンと機械の放つ電気で満たされていた。あちこちで稲妻が走り、バチバチと音を立てている。
懸命に戦ったのだろうアルベド族の人々は、壊れた機械と共にあちこちに散乱しており、部屋の中央では機械と一体となったイクシオンが蹄を鳴らしている。
「教えて下さい、何が起こっているんですか!?」
ユウナのその問いに、イクシオンが答えることは無かった。
嘶き、暴れ回る姿を見て、かつてその力に助けられてきた召喚士二人は「どうしてこんな事に」と拳を握る。
傷付けたくはないが、暴走を止めなければ沢山の人が死ぬ。
シンを倒すために、スピラの皆を救う為にその命を捧げてくれた召喚獣に、そんなことをさせてはならない。
殺すのではなく、止める。
シンを――ジェクトを倒すことを躊躇っていた時にかけられた言葉を思い出して、ユノは覚悟を決めイクシオンに挑んだ。
「ま〜た穴だよ。この下、どうなってんのかな」
イクシオンを退け、祈り子様の部屋の様子を確認しに向かうと、やはり他と同じように巨大な穴が空いていた。
穴の縁に屈んで中を覗き込むリュックに、ユノも同じようにする。
何も見えない深い闇。ただ地面が崩落しただけでは、こうはならないだろう。
ずっと見ていると吸い込まれそうで、ユノはそろそろと体を戻す。
「気になるなら、降りてみれば?」
「やだ、絶対やだ!」
「こんな穴、自然に出来るものじゃないよね……」
「でも、人の手でこんなに深い穴を掘るのも、無理なんじゃないかな」
「じゃあ、召喚獣がやった?」
「う〜ん……どうだろ……」
「まあ、ここで悩んでても仕方ないし、一旦戻って――――」
と、踵を返したパインは、通路の先で再び立ち上がっているイクシオンに気付いた。
「――まずい! 皆!」
「お?」
「なに?」
「どうし――――」
どうしたの、というユノの声は、爆発音に掻き消された。
炎を纏った風が津波のように押し寄せて、端に居たパインとリュックはそれぞれ左右に飛び退く。
お陰で二人は無事に済んだが、イクシオンの真正面に居たユウナとユノに逃げ場は無く。
咄嗟に後ろに飛び退いた二人は、揃って穴の中に落ちていった。