01.ミッションスタート!

「楽しもうと思って来たのに〜! もう、ムカツク〜!」

聞き覚えのある、そんな声が聞こえた。
声の主はダンダンと地面にその怒りをぶつけている。

「どーする? 帰る?」

「……リュック?」

「へ? ……ユノ!?」

少女、リュックはこちらを見るなり、パッと顔を輝かせて飛びついてきた。

「わっ!?」

「ユノ、ユノ〜! ユノだ〜!!」

「うん、うん。久しぶりだね、リュック」

「久しぶり〜!! 見てみてほらユウナ! ユノだよ!!」

「ユノ!? 久しぶりだねぇ!」

「……へ? ユウ、ナ?」

リュックと同じく飛びついてきた相手を、信じられないといった顔で見る。

それは二年前、苦楽を共にしてきた旅の仲間であり、今は自分と同じ大召喚士の一人……なのだが。

露出の多い服に、毛先をハネさせた髪形。腰には二丁の拳銃。
二年前とはあまりにも雰囲気の違うその出で立ちに、ユノは困惑する。

「えっと……なんだか、雰囲気変わった?」

「あ、これ? リュックがね、変装にって」

「イイ感じでしょ〜? っていうか、ユノも髪切ってる!」

「あ、うん。……変かな?」

「そんなことないよ、すごく似合ってる!」

「相変わらず美少女だねぇ〜」

「リュック……」

二年経ってもまだそのネタでからかうつもりかとしょげていると、一人見慣れない女性が立っていることに気付いた。

「えっと、あの人は……?」

「パインだよ、カモメ団の仲間!」

全身黒い服に身を纏った長身の女性は、そっけなく「どうも」と一言。

「……なんか、怒らせちゃった?」

「ううん、パインはいつもあんな感じ。あんまりお喋りするほうじゃないんだ」

「そっか……」

「で、どうする? 帰る?」

「どうしよっか……。そういえば、ユノはどうしてここに居るの?」

「えっと、この騒ぎを何とかしようと思って……でも、誰も俺の話なんか聞いてくれなくて、結局皆行っちゃった……」

「そっか、ユノ、島の代表だもんねぇ」

「ユウナたちはどうして?」

「すごいスフィアがあるって聞いて来たんだけど……なんだか、イメージと違ったから」

そういえば、今はリュックとスフィアハンターやってるんだっけ。
二年前に別れる際にリュックからそう聞いていたことを思い出す。

「そーそー、なーんか凄いやな感じ! 楽しめなさそうだし、もういいんじゃない?」

「すんごいスフィア、いらないのか?」

リュックとパインの言葉に、ユウナはしばし思考。そして、

「決めた! 争いの元みたいだし、私たちが貰っちゃおう!」

寺院の方角をビシィ!と指差し、高らかにそう宣言した。

「え、ぇえ!?」

「だって、ユノも困ってるでしょ? スフィアさえ盗っちゃえば、二派の争いも無くなるし……」

「私たちはスフィアゲットで一石二鳥! だね! 賛成ー!」

「で、でも、争いに巻き込まれちゃうかもしれないし、ユウナ達が危ない……」

「伊達にスフィアハンターやってないけど?」

「心配無用ッス!」

「レッツゴー!」

ハイタッチを交わして仲良く森へ走っていく三人を、どうしようと悩んだ末に慌てて追いかける。

「待って! 俺も一緒に行く」

「え? でも、危ないよ?」

「足手まといになられると困るんだけど」

「大丈夫、戦えるから」

そう言って、道の先から現れた魔物を蹴り飛ばす。
起き上がろうとするところに上からもう一撃。

「ね?」

「……なんか、外見とのギャップが……」

「ワッカさんたちが見たら、吃驚するね……」

「ついていっていいかな?」

「お好きにどーぞ」

長剣を担いでさっさと先に進むパインに、三人が続く。

その後姿に、物言いに、目つきに。
ユノは懐かしい人の影を重ねて、ほんの少し目を伏せた。






「いいからさっさとスフィアを出しなさいよ!」

寺院に続く階段の途中で、ドナを含めた新エボン党派と青年同盟派の者たちが言い争う。
四人はその人影に紛れるようにして様子を伺った。

「そんなこと言われても……」

「スフィアを見つけたぞー!」

上から降りてきた青年同盟側の男達が皆にそう告げる。
勝ち誇ったように笑みをたたえる青年同盟派だったが、直後突然の地鳴りと揺れがその場に居た人々を襲った。

上層から何やら脅えた様子で駆け下りてくる男達。
その後ろから現れたのは───

「……機械騎士!?」

「ふん! こんな時のために用意しておいたのさ! これで終わりだ!」

ズシンズシンと駆け足で階段を下ってくる巨大な機械人形に、逃げ遅れた四人が渋々ながら立ち向かう。

なるほど言うだけのことはあって、ユウナ達の実力は大したものだった。
体格の差をもろともせずに相手をうちのめす。

「どんなもんだ!」

「こんなもんよ!」

「あんたたち、何してるのよ?」

自分の、そしてユウナの顔なじみであるドナが、こちらに気付いて怪訝な顔をする。
その問いに、ユウナが恥じらいがちに呟く。

「スフィアハンターカモメ団……」

──その場に静寂が訪れた。

はぁ? と周囲の人間の今の心情をご親切に口に出してくれたドナに、開き直ったユウナはリュックとパインと共にキメポーズ。

「カモメ団、参上! すんごいスフィアはいただきます!」

言っちゃった、言っちゃったよ。

こっそり奪ってこっそり隠すなり棄てるなりしてしまおうと考えていたユノは絶望した。
これでは二派の恨みの矛先がユウナ達に集中してしまう。

あっけにとられている男からスフィアを奪って、三人はタイミングよくやってきた飛空挺に乗り込もうとする。

「ちょっとあんた、何ぼさっとしてるのよ!」

「え、え?」

「スフィア! あの馬鹿娘から取り返してきなさいよ!」

「えっ、俺!?」

「島の代表が、目の前で起きた窃盗を見逃すつもり!?」

「あ、えっと、ま、待ってユウナ!」

ドナに急かされるがまま飛空挺に飛び乗り、四人を乗せた飛空艇は唖然とするキーリカの人たちを残して上空へと飛び去っていった。
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