01.ミッションスタート!
「あれ、ユノ? どしたの? なんか言い忘れ? それともさっきの見てカモメ団に入る気になった?」「そうじゃなくて、スフィア、持ってっちゃったらまずいよ……!」
「なんで?」
「なんでって……」
「あたしたち、スフィアハンターだもん!」
ねーっと顔を見合わせて笑うユウナとリュックに、さてこれからどうしたものかとユノは頭を抱えた。
カモメ団の愛機、名をセルシウスと言うらしい飛空挺の中は、その外見通り凄い広さだった。
ハッチから昇降機で下りてきたユノは初めて見るそれらに感動し、すぐに今はそれどころじゃないと我に帰る。
「あいつらの顔見た〜? みんなポカーンとして、腰抜かした人もいてさ」
「ちょっとやりすぎちゃったかな?」
「そんなことない! スピラ中にカモメ団の名前がとどろくぞ!」
キャビンからユウナたちを迎えにやって来た人物に、ユノが「あ」と声を漏らす。
「アニキさん、お久しぶりです」
「ぬぉおお!? ユノ、ユノか!?」
「はい、二年前はお世話になりました。スピラ語ずいぶん上手になられ──」
「久しぶりだな! 相変わらず可愛いっ!」
「…………アニキさんって、俺の性別知ってるっけ」
「知らないと思う、トタギも女だと思ってたし」
不安になってリュックに尋ねて、ああそういえば二年前アルベド族のホームで性別を間違われて、それを訂正するのを忘れていたなと思い出した。
「すみません、俺、本当は男なんです」
「……今オトコと聞こえたんだが、俺の翻訳は間違ってるかリュック?」
「間違ってないよ、ユノは男の子」
「フホガ、ハシアオヤヒダミガ!」
「……なんて?」
「嘘だ、何かの間違いだ≠チて」
「あはは……」
体も鍛えたし、背も少しは伸びたし、髪も切ったし、言葉遣いも態度も、二年前よりは男らしくなったと思っていたのだけれど。
そう言ってもらえるにはまだまだ足りないようだ。
「お、ユノ様じゃないか。俺のこと覚えてくれてるか?」
「え? えっと……」
そしてもう一人。
アニキの隣に立っている人物に尋ねられて、必死に二年前の記憶を掘り起こす。
が、該当する人物が出てこない。
「なんだ、やっぱりあんたも覚えてくれてないのか?」
「あんたも=H」
「私も覚えてなかったんだ。二年前も飛空挺に乗ってたらしいんだけどね」
「ダチだ、アニキの昔馴染みでな。今はこいつらとカモメ団やってる」
「すみません、あの時は色々と必死で、あんまり皆さんの顔覚えてなくて……」
「いいっていいって、これから覚えてくれりゃいいさ」
「で、スフィアは!?」
パインがアニキにスフィアを手渡し、アニキの手から今度はキャビンに居る少年へと移る。
「あの子は?」
「シンラ君、アルベド族の天才少年。スフィアの解析とか発明とか、なんでも出来るんだよ!」
「そうなんだ……って、じゃなくて! そのスフィア、返さないと……」
「なんでさ〜!?」
「カモメ団って名乗っちゃったし、青年同盟と新エボン党が攻撃してくるかもしれない、危ないよ」
「確かに、面倒に巻き込まれるのはカンベンしてほしいぞ」
「いいじゃん! じみ〜なスフィアハンターなんてつまらないよ!」
「そうだ! その通り!」
「不吉な……」
「ん?」
「兄と妹の意見が合うと、ロクなことが起こらないし」
特徴的な喋り方をするシンラに、ユウナが「それは……まずいっすね」と微笑した。
元々は別の人の口癖だったその語尾に少し切なさを感じながら、ユノは説得を続ける。
「ね、返したほうがいいよ」
「でも、返すにしても、どっちかに渡しちゃったら、もう一方は怒るよね?」
「それはそうなんだけど……両方から恨まれるよりは、いいんじゃないかな」
「あーもう、そんな話はあとあと! とりあえず中見てみようよ!」
リュックの言葉にひとまずは賛成して、シンラが解析したスフィアを見る。
「単なる映像スフィアだね、特別な機能はないみたいだし。スフィアの中身、見る?」
「うん、お願い」
手元のタッチパネルを叩くと、前にあったスクリーンに映像が映し出された。
ノイズ混じりにだが、映っているものはハッキリと見える。
無機質な空間、静かに佇む巨大な機械。
響く警報、そして────
『お前が、レンを助けてくれるんだな?』
酷く記憶を刺激する、青年の顔と声。
「……ティーダ」
口から零れた小さな音は、幸い誰にも聞かれることはなかった。
「ハンガモワオチアミ!」
「心当たりは?」
「全然だし。でも、すごく危険な機械だと思う。どう見ても兵器」
アニキ達は映っていた兵器に目が行った様だが、二年前共に旅をしたメンバーにしてみれば、そんなものに関心は向かなかった。
「あいつ……だよね」
リュックが半ば確信を持って言う。
心配になってユウナを見れば、相手はただじっと画面を見つめていた。
不安そうな、どこか怒っているような表情で。