01.ミッションスタート!
「あのな、このスフィア……返そう」映像を見終わって、集合をかけたアニキがそう口を開く。
「せっかく手に入れたのに?」
「はげしくヤバすぎる!」
「手に入れた映像スフィアを、スピラの歴史研究のため提供する。それが、スフィアハンターの本来の姿だ」
「今更初心に帰ってどうする」
「ぶんどっておいて、ねぇ!」
不服そうなリュックとパインに対し、駄々を捏ねる子供のようにアニキが反発。
「とにかく、こんなの持ってたくない! 返すったら返す!」
「うん」
「いいの?」
「もう見たから。それに、ユノもその方がいいよね?」
「奪ったスフィアをノコノコ返しに行くってのも、相当みっともないよな」
「トヤネダミフハ!」
「カモメ団の評判もガタ落ちだ。特に、リーダーのな」
タアヤキミ……と、何と言ったのかは分からないが、パインの鋭い一言が効いたのか相当ガッカリした様子のアニキに、他の面々もはぁと深い溜息をつく。
「暗い雰囲気になっちゃったな……」
「あ……えっと、なんか……ごめんね」
「ユノのせいじゃないよ〜。でも、パーッと気晴らしでもしたいよね」
「気晴らしねぇ……」
「ユウナに踊ってもらうとか」
「へ?」
「おおお! それだ〜っ!」
シンラの提案に、元気を取り戻したアニキが食いついた。
「ユウナ、踊ってくれ! みんなのために、頼む!」
「リーダー命令らしいな」
「うん。体、動かそう!」
「やったー!」
はしゃいで一人先に踊り出すアニキ、いつものことなのか皆は完全にスルー。
「じゃあ、支度するから少し待ってて。──あ、そうだ。せっかくならユノも一緒に踊らない?」
「……ん? え?」
「おおおお! それはいいっ! 素晴らしい!」
「それ、あたしも見たーい!」
「え、あの、ちょっと」
「大召喚士二人の生ライブかー、人を呼んだら儲かるんだけどなぁ」
「シンラ君、リザルトプレート、ある?」
「ある」
「俺、踊るとかそういうの全然出来な……」
「問題ないんじゃないの。ユウナ曰く、体が勝手に踊り出す≠轤オいから」
「それってなんか危ないんじゃ……!」
「大丈夫、大丈夫!」
有無を言わさず強制的に連行され、ユノは結局ユウナに言いくるめられて急遽ダンスを披露させられるハメになるのだった。
飛空挺の甲板。夜空の中で浮かび上がっているその光の中で、パインの言うとおり"体が勝手に踊り出している"ユノは、自分の意思とは関係なく動く身体に最初は恐怖を感じたものの、次第に楽しさが込み上げてきて、皆の喝采の中で元気に飛び回っていた。
しかし一時間近く踊りっぱなしだと流石に身体のほうは限界で。
少し休憩してきますと言って一人その輪から外れる。
ユウナも同じく甲板の端に一人座っていて、その隣に行こうか迷って、離れた場所に腰を下ろした。
(あの映像のこと、やっぱり気にしてる……のかな)
踊っている間の彼女は、いつもと変わらない笑顔ではあったけれど。
彼女がそういった感情を表に出してくれないことを自分は知っている。
(本当にあれがティーダなんだとしたら……、あれ、いつの記録なんだろう? 俺たちと出会う前? 彼の元居たザナルカンドの街? それに……)
「レンって……誰?」
ハッキリ聞こえた、レンを助けてくれるんだな? と。
どういう状況だったのかはあの映像だけでは把握出来ないけれど、彼にとってきっと大事な人なのだろう。
けれど自分の知る彼にとって、大事な人というのは……
(ユウナのはず、なんだけどなぁ……)
二年前、旅の中でずっと二人を見てきた。
短い間だったけれど、互いに通じ合い、支え合い、そして最後には、彼はユウナとスピラの為にその命を投げ出した。
まだ非力だった自分に、ユウナを託して。
(元の世界では凄い人気だったんだっけ。じゃあそういう人が居てもおかしくは……ないのかな。でも、レンなんて名前、一回も聞いたことないし……ってことはやっぱり、昔の恋人……)
「レンって誰だっつーのー!!」
「!?」
ラッパやら太鼓やら笑い声やらが響いていた夜のスピラ上空に、突然そんな声が響き渡る。
音の出所はユウナだった。
ユノの数メートルほど後ろでいつの間にか立ち上がっていたユウナは、しんと静かになった甲板にはっとして皆を振り返る。
二人の代わりに踊っていたリュックも、演奏を手助けしていた亜人たちも、観客の皆も一様にユウナを見ている。
「……もう、寝ます」
注がれる視線の中、彼女はさっさと飛空挺内に引っ込んでしまった。
ユノも立ち上がり、リュック達のところへ戻る。
「ユウナ……やっぱ、気にしてるんだねぇ」
「うん、でも、仕方ないよ。それに……俺はちょっと安心したかな」
「へ?」
「感情、表に出してくれたほうが嬉しいから」
普段から、我慢なんてしなくてもいいのに。
ああやって、溜め込んでること叫んじゃえばいいのに。
「俺も、そろそろ寝るね。寝台、貸してくれてありがと」
「え〜、もう寝るの〜?」
「もう結構遅いよ?」
「夜はまだまだこれからなの!」
再び踊り出すリュックに、元気だなぁと微笑しつつ一人甲板を降りる。
賑やかで、明るくて、夜がふけても眠らない街。
(キミが居たザナルカンドは、こんな感じだったのかな)
今はもう傍に居ない仲間のことを思い浮かべながら、ユノはシンの居た頃とは違う深い眠りについた。