02.永遠の終わり

飛空挺の緊急信号の原因は、どうやら侵入者だったらしい。
何か異常がないか飛空挺内を調べていたアニキ達が、大きなスフィアを抱えて戻ってくる。

「見事にかっぱらわれたし。ザナルカンド遺跡で見つけた、壊れたスフィアだね」

「代わりに、こんなもの残していきやがった」

それは映像スフィアのようで、再生された映像には飛空挺のブリッジと、謎の三人組が映っていた。

『ざまーみな、カモメ団。このルブラン様と張り合おうなんて1000年早いよ!』

あーっはっはっは! と三人分の高笑いで締めくくられるその映像。
口ぶりからしてカモメ団とは因縁があるのだろう、その経緯を知らないユノは「派手な人達だなあ」といった感想を零すに留める。

「なめられたもんだ」

「ムカツキ」

「その言い方やめなよ」

「リュックのマネだよ?」

「で、どうする?」

「取り返すに決まってるでしょ、なめられちゃ終わりよ」

「ヴェグナガンの方は?」

パインの言葉に、ユウナは少し考えて、
そしてその考えを振り払うように言った。

「私たちは何? スフィアハンター・カモメ団よ!」

ユウナが笑って、パインも笑って、リュックと共に三人でハイタッチ。

「そうだ! 盗られたら盗り返す、それがスフィアハンターの掟! ルブラン一味のアジトに行くぞ、堂々と突撃だ〜!」

「堂々と迎撃されるし」

ノリノリのアニキに、シンラが冷ややかな一言。
ならば変装して乗り込もうとユウナが提案した。

「そんじゃ、あちこち飛び回ってルブラン一味を見つけて……」

「奴らの戦闘服を奪う、と。三人分──いや、四人分か?」

こちらを見て人数を増やしたパインに、
自分が頭数に入れられていることを察したユノが頭を振る。

「えっと、俺は、そろそろキーリカに戻らないと……」

「なにっ!? 帰るのかっ!?」

「はい、キーリカでの騒ぎは、皆さんのおかげでなんとかなりましたし……、様子も気になりますから」

「そっか……なら仕方ないね」

「頼むっ、帰らないでくれえぇぇぇ」

「うっさい! ユノは忙しーの!」

「なら、キーリカまで送るか」

「えっ、そんな、悪いです」

「歩いて帰れるのか?」

それは。
ここからキーリカまでの道程を考えて、その距離に言葉を詰まらせる。

「……や、やろうと思えば」

「意地張らないで、素直にお願いしますって言えばいいのに」

「意地張ってるんじゃなくて遠慮してるんだよ、ユノはそういう子なの」

「どうせルブラン一味を探すのにあちこち行くんだ、キーリカにも行くだろうし、遠慮なんかしなくていいって」

「そう、ですか? ええと、じゃあ……すみません、よろしくお願いします」

「忘れ物ないようにな」

忘れ物といっても、荷物は特に持ってきてはいないのだが。
そういえば、昨日着替えたときスフィアを寝室に置いてそのままだったか。

普段はどこかに置いてもそのまま置き忘れる、なんてことはないのだが。
今朝はあの妙な夢のせいですっかり記憶から抜け落ちていた。

今の自分にとって、命と同じくらい大事なものといっても過言ではないそのスフィア。
二年前のあの日にユウナから手渡された、あの人が遺してくれた、たった一つの宝物。

さっさと寝室まで戻って、それを手に取ろうとしたのだが。
自分の借りていた寝台の前まで来て、ユノは固まった。

「……………………」

────無い。

寝台の脇に置いてあったはずの大事な大事なスフィアは、跡形もなく消えていた。

「……あれ、あれ? ど、どこかに落ちてるのかな……」

ベッドの下やら棚の裏やら、床に這い蹲って隅々まで探してみるが、見当たらない。
可能性は低いと分かっていても一階まで降りてあちこち探し回る。

一階にあるバーの店番を任されているハイペロ族のマスターは、そんなユノに首を傾げた。

「なにか探しもの〜?」

「あ、えっと、スフィアなんですけど……、映像スフィアで、こんな紐と装飾の着いた……知りませんか?」

「知らない〜よ? さっき掃除した時には、もうなかった〜よ」

「そ、そうですか……」

誰かが持っていった? まさか。いくらスフィアハンターといえど仲間のスフィアを勝手に持ち出すような者はこの船には居ない。

かと言って、自分が無意識に持ち出した記憶もない。
となると、あと残る可能性は────

「……あっ!」

もしかして、もしかして……!?

ユノは慌ててブリッジに戻り、シンラにもう一度ルブラン達の残していったスフィアを見せてくれと頼んだ。

「なになに、どうしたの?」

「俺のスフィアがどこにもなくて……」

「ユノのスフィア? ……それって、もしかしておっちゃんの──」

「あっ、そこ! そこで止めてください!」

ルブランの後ろに映っている二人の男、そのうちに一人が何かを手に持っている。
拡大してみると、それは見覚えのあるスフィア。

予感的中。
ユノはがくぅっと膝から崩れ落ちた。

「盗られた……」

「えっ!? あのスフィア!?」

「うん……」

何てことだ、自分が寝室に置き忘れたばかりに。
お金にも何にも代えられない、世界に1つしかない大事なものなのに。

どうしよう、もし取り戻せなかったら?
何かのはずみでうっかり壊されてしまったら?
若しくは中身を見てそう価値のないものだろうと思われて、捨てられてしまったら? 逆に高く値がつきそうだと売り払われてしまったら?

思考は猛スピードで悪いほうへと流れ、みるみる顔から血の気が失せていく。
そんなユノを見て、リュック達も慌てる。

「だだだ大丈夫だよ! ユノのスフィアも、あたしたちが取り返してきてあげるからさ!」

「そうだよ、だからユノは心配しないで」

「……うん、でも……やっぱり、俺も一緒に行っていいかな?」

「えっ?」

「島はいいのか?」

「良くはないんですけど……あのスフィアは……あのスフィアだけは、どうしても、放っておけないんです」

ユウナ達を信用していない訳ではないし、自分が居ても居なくてもさして大差は無いのかもしれない。

それでも、もし取り返せないままに終わってしまったら、行かなかった事をずっと後悔するだろう。

思いつめた表情で答えるユノに、ユウナとリュックは「無理もないね」と頷き合い、他の四人は首を傾げる。

「そんなに大事な物なのか?」

「アーロンさんの……二年前にユノのガードをしてた人の形見なんだ」

「ああ……成程ね」

小声でユウナとそんなやり取りをしたパインは、改めて言い直す。

「それじゃ、戦闘服を四人分、だな」
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