02.MakeUpWith

そうして翌日。
二人は活動資金を稼ぐ為に、アンダージュノンの人々の御用聞きをして回った。

依頼内容は様々だったが、意外と多かったのは資材や食材の調達だった。
探せばアンダージュノンの近郊で手に入るものばかりだが、近年はあちこちに凶悪なモンスターが彷徨くようになったせいで、おいそれと採りに行けなくなってしまったらしい。

「モンスターもアタシ達で退治しちゃおっか」

「そうですね。調達のついでですし」

根本的な解決にはならなくとも、一時凌ぎにはなる筈だと、二人は遭遇したモンスターを片っ端から斃した。
これも何かに使えるだろうと、斃したモンスターの皮や角や牙も剥ぎ取って持ち帰ると、村の入口で見張りを続けていたロドナーに驚かれた。

「どうしたんだい、それ」

「戦利品!」

「戦利品って……あんた達がモンスターを?」

「そ! ユフィちゃんの鮮やかな手裏剣捌きでシュシュシュっとね!」

「お嬢……正体隠す気あります?」

「え? 隠す必要ある?」

どうやらユフィにとっては、反神羅は皆味方という事らしい。
確かにロドナー達は敵では無いかもしれないが、どこから話が漏れるか分からないとシユウは忠告する。

「特にここは神羅の軍事拠点の真下ですから。いつもより慎重に動かないと」

「でも、元々ここに来たのだって、協力者を増やす為だし。たまには人の手も借りないと」

「……あんた達、ただの観光客ってわけじゃ無さそうだね。もしかしてアバランチかい?」

「よくぞ聞いてくれました! アタシこそは、ウータイに咲く一輪の花! ある時は凄腕マテリアハンター、ある時は――」

「お嬢、簡潔にお願いします」

それは目立つので、とシユウにジャグリングに使っていたマテリアを没収されたユフィは、むぅと頬を膨らませながら名乗り直す。

「ウータイのシノビだよ」

「シノビねぇ。なら、暗殺なんかも依頼すればやってくれるのかい?」

「え、暗殺? まぁ、やれないことは無いけど……」

「内容によります。俺達はフリーの殺し屋とは違いますから、故郷に益の無い殺しの依頼は受けられません」

「益ならあると思うよ。ターゲットは神羅カンパニーの新社長、ルーファウス神羅だ」

「新社長? 代替わりしたんですか?」

「プレジデントは昨日亡くなったそうだよ。そのまま神羅も潰れてくれれば良かったのにね」

「それほんと? 誰がやったの? アバランチ?」

「さぁね。私もさっき兵が話してるのを偶然聞いただけだから、詳細は知らないよ。それで、ルーファウスが近々上に来るらしいんだ。就任パレードをやるんだとさ。その時なら狙えるだろう?」

「狙えるって言っても、警備はかなり厳重になりそうですけどね……お嬢、どうします?」

「やる」

即答だった。
まあ、打倒神羅を掲げるからにはいずれ斃すべき相手だ。
報酬まで貰えるのなら受けない理由は無い。

「ちなみに、幾ら払って貰えるんですか?」

「そうだねぇ……暗殺の相場なんて私には分からないけど、あんた達は幾ら欲しいんだい?」

「うーん。アタシ達も、民間の人から暗殺の依頼なんて受けたこと無いし……村長さんが決めてくれていーよ」

「それは有難いねぇ。だったらその代わりに、宿代はこっちで持つよ。好きなだけ寛いどくれ」

「助かります。それじゃお嬢、早速作戦会議でもしますか」

「りょーかい! まずは上に行く方法を考えないとね」

一番確実なのはやはりエレベーターを使うことだろうが、変装したとて途中でIDのスキャンでもされればバレてしまう。
強行突破も出来はするだろうが、騒ぎになれば暗殺どころの話ではなくなる。目的を果たすには、ひっそりと事を進めなければならない。

他に上に行けそうな道は無いか、二人で村の中を見回っていると、海辺に吊り下げられている船が目に留まった。
恐らくは船の上下架装置だろう。太い四本の鉄柱の間に船が挟まれる形で浮いており、その脇に操作室らしき小部屋がある。

「あれ使えないかな?」

「どうでしょうね。あの船を動かせれば上には行けそうですけど……」

「じゃあちょっと見に行ってみよ」

「見にって、どうやってですか」

操作室に繋がる階段は上にしか伸びていない。つまり上からしか入れない構造だ。アンダージュノンの者が使うことは想定されていないのだろう。
柱をよじ登ろうにも、デカデカと書かれた高圧電流注意の文字がそれは無理だと言っている。

「鉤縄が引っ掛けられそうな場所があったら、綱を登って操作室まで行けるでしょ」

「それを探すには柱の近くまで行く必要がありますけど、周り海ですよ」

「そこはあの小舟とか貸して貰えばいいじゃん」

ユフィは海岸に幾つか浮かんでいる簡素な木造の船を指して言った。
波に揺られてユラユラ揺れているその軽そうな船体を見て、シユウが渋い顔になる。

「…………お嬢、大変申し訳無いんですが、下見はお任せしていいですか?」

「いいけど、なんで?」

「……………………」

「――あ、そっか。そういえばそうか。シユウってカナ」

「お願いします。装置が動くなら、俺も腹括るんで」

遮って言うシユウに、ユフィは笑いながら承諾。

何にせよ、まずは船を借りられるか交渉する必要がある。
例によってロドナーに聞きに行くと、船の持ち主に話を通してくれた。

上からのお達しで今は漁にも出られないらしく、この状況を変えてくれるのならと快く貸して貰えることに。

「ただ、最近は海にもモンスターが出るようになってな。船もやられてあちこちボロボロなんだ。使うなら、念の為に直した方がいい」

「直すのはすぐ出来るの?」

「修繕だけならな。でも材料が足りてねぇんだ」

「なら俺が集めて来ますよ。お嬢は休んでてください」

男から必要なものを書いたメモを受け取って、シユウは一人外へ向かった。
木材と、補強に使う鉄鉱類。木材はこれまでの依頼でもよく頼まれていたので、集めるのにそう苦労はしなかったが、問題は鉄鉱。

アンダージュノン近くの坑道、ミスリルマインで採れるとのことだが、ミスリルはともかく他のものは石と見分けがつかない。
放置されていたピッケルを手に、とりあえず目に付いたそれらしきものを掘ってみるが、上手く掘り出せない。

仕方が無いので足元に落ちている石を拾い集めていると、坑道の奥、アンダージュノンとは反対の方角から、複数の足音が聞こえてきた。

シユウとユフィも来る時に中を通ったが、ここはモンスターが多く、一般市民が通行出来るような場所ではない。
一体誰が、と身構えていると、出てきたのは黒いスーツの男女三名。

その内の一人、スキンヘッドの男性が、サングラス越しにシユウと目を合わせる。シユウの知った顔だった。八番街のバーで働いて居た頃の常連客、ルードだ。

「お前は……こんな所で何をしている?」

ジージェと話すようになってから知った事だが、ルードの属する総務部調査課――巷ではタークスと呼ばれている――というのは、ウータイで言うところのシノビのような役割を担っているらしい。

通りであの強さなわけだと、過去の八番街での事件の際の彼らの活躍を思い出しながら、警戒を解かずシユウは答える。

「仕事です。前の職場が潰れたので」

「前の職場? 八番街のか?」

「いえ。最近は七番街スラムで働いていました。ご存知でしょうが、何処かの誰かがプレートを落として、文字通り店が潰れたので。今はアンダージュノンで依頼を受けて、日銭を稼いでるんです」

「……………………そうか」

「先輩、その人は? 知り合いですか?」

恐らくは同じタークスの一員なのだろう、ブロンドヘアーの若い女性がルードに尋ねた。
ルードは彼女と、黒い長髪の男性を一瞥して答える。

「以前、八番街でバーテンダーをやっていた男だ。俺とレノ、他のタークスのメンバーもよく通っていた」

「なぁんだ、そんなことですか。油売ってないで、さっさと行きましょう」

女性は興味を無くしてスタスタと通り過ぎて行った。彼女に主任と呼ばれた長髪の男性は、探るような目でルードとシユウを見たが、特に何も言わず女性の後に続く。
シノビであることはルードにはバレている筈だが。

「七番街の詫びのつもりですか?」

「いや。今は他に優先すべき事が多くてな。余計な衝突を避けたいだけだ。お前が俺達の仕事の邪魔をするつもりなら容赦はしないが、そうでないのなら、こちらもお前の仕事の邪魔をするつもりは無い」

「……そうですか。そう言えば、レノさんはどうしたんですか?」

「あいつはヴァケーションだ」

「へぇ。神羅ってそういう福利厚生あるんですね」

「シノビには無いのか?」

「無いですけど、そもそも勤務形態がそっちほど厳しくは無いんで。年中バケーションみたいなもんですよ」

「そうか。羨ましい限りだ」

「転職希望なら歓迎しますよ。給与はかなり下がると思いますけど」

「こちらも優秀な人材は常に募集している。その気があるなら面接に来るといい」

「せんぱーい! いつまで喋ってるんですかぁ? 置いていきますよ!」

坑道の外から女性の声が響き、ルードは会話を打ち切ってそちらへ向かった。
彼らの姿が見えなくなって、シユウはほっと胸を撫で下ろした。タークス相手に3対1では流石に勝ち目がない。

(でも何でタークスが三人もこんな所に? アンダージュノンに用があるにしても、神羅のヘリを使えばいいだろうに。なんでわざわざ歩いて……)

まあ、別にそこはどうでもいいか。
シユウはそれより鉄鉱を集めなければと作業を再開したが、暫くしてまた人の気配がした。

先程よりも多い足音。賑やかな話し声。
その声で近付いて来ているのが誰なのか分かって、シユウは「これは隠れた方がいいのか」と一瞬悩んだが、都合良く隠れられるような場所もなく、結局鉢合わせる。

「お前……!」

「シユウさん!」

まずバレットが驚いた顔で足を止め、同じく驚いた様子のティファが駆け寄った。
その後ろにはクラウドと、見慣れぬ女性と犬も居る。

「良かった、また会えて……でも、どうしてここに?」

「ティファさん達こそ。さっきタークスも此処を通りましたけど、まさか追われてるんですか?」

「いや。戦闘にはなったが、あいつらの目的は別にあるらしい」

クラウドの言葉を聞いて、成程それでルードは自分との戦闘を避けたのかとシユウは納得した。恐らくはクラウド達との戦いで消耗していたのだろう。
ティファの傍に来た女性が、興味津々といった様子で尋ねる。

「ね、あなたが、ウワサのシユウさん=H」

「噂の?」

「ティファ達から、貴方の話、色々聞いたの。わたし、エアリス。よろしくね」

エアリス、というと、確か以前五番街でクラウドを助けたという、古代種の女性だったか。
神羅に連れていかれたと聞いていたが、クラウド達と居るということは、無事に救出出来たのだろう。シユウは次いで傍らの犬に目を向ける。

「そっちはエアリスさんのペットですか?」

「ペットとは心外だな」

「喋っ、、、え? 今喋っ…………腹話術ですか?」

「正真正銘、私が喋っている」

「この子はレッド。神羅ビルで会ったの。色々あって、一緒に来てくれることになって」

喋っていることには何の説明もなく、ティファがそう紹介した。
シユウは突っ込んではいけない部分なのかと、湧き出る疑問を飲み下す。

「ええと……それで、ティファさん達はどうしてここに?」

「私達、黒マントの人達を追ってるんです。見てませんか?」

「黒マント?」

「天望荘にも居ただろう。魔晄中毒の……あれと同じ格好の奴を探してる」

「それなら、来る途中にすれ違ったような気もしますけど……」

「なら、ジュノンに居るかな?」

「行ってみよう」

何故黒マントを追っているのだろう。
気にはなるが、自分から彼らに関わるのは良くないかと、シユウは鉄鉱集めに戻ろうとしたが、バレットの方から声をかけてきた。
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