02.MakeUpWith

「お嬢! やっと見つけた」

クラウド達の参加していたパレードも終わり、表彰式が始まろうかと言うところで、シユウは漸くユフィと合流することが出来た。
変装のつもりなのか、はたまた彼女なりの想いがあるのか、ミッドガルで使っていたモーグリマントを被っている。

「おかえりー、遅かったね」

「いや、お嬢が勝手に動くからですよ。ここ広いんですから、あちこち行かれたらこうなります」

「ゴメンゴメン。でもそのお陰で、良い感じの場所見つけたんだ」

こっち、と手招きされてシユウがついて行くと、表通りの奥まった場所にある建物に辿り着いた。
外壁塗装でもしているのか、壁に面して作業用の足場が組まれており、それを辿ればちょうど表彰台が見下ろせる位置に出る。

「確かに、良い場所ですね」

「でしょ? あとはルーファウスが出てくるのを待つだけだね」

二人は身を屈めてその時を待った。かなり高さがあるので、下からは意図して見上げなければ気付かれないだろう。
間も無く始まった表彰式の賑やかな様子を眺めながら、ユフィが呟く。

「さっきの砲撃、見た?」

「見ました」

「やっぱりさ、神羅相手にヘコヘコしても、良いことなんて一つも無いんだよ。オヤジはそれを分かってないんだ」

「……そうかもしれませんね」

『続いて、社長賞を発表する!』

壇上のハイデッカーがそう告げて、ルーファウスにマイクを譲った。
警備兵から離れて一人登壇したルーファウスを見て、二人は立ち上がる。

「いよいよだね」

「チャンスは1度きりなので、慎重にいきましょう」

「分かってる。アタシにやらせて」

ユフィは手裏剣を胸の前で構えて目を閉じた。

「……仇、討つからね」

彼女が誰のことを思い浮かべているのか悟って、シユウは大人しく見守ることにした。
ここで手を出せば、彼女のシノビとしての矜恃に傷が付く。

社長賞には無事クラウド達が選ばれたようだ。
ルーファウスも、他の皆の意識もそちらに向いている。クラウド達を巻き込んでしまう可能性が高いが、やるなら今しかない。

「……いくよ」

「いつでもどうぞ」

成功しても失敗しても、確実に反撃は来る。
シユウはそれに備えて忍具の数と逃走経路を確認。祈りを終えたユフィは、手裏剣を振り被って狙いを定める。

そして、ユフィの手から手裏剣が離れた。
己の手に戻ってくるよう、その軌道は僅かに湾曲しているが、狙い通りルーファウスへ向かう。相手は気付いていない。

取れる――――二人はそう確信したが、

「やめろーーーーっ!!」

事態に気付いたバレットが下から叫んだ。
その声で逸早く状況を理解したハイデッカーが、身を挺してルーファウスを庇う。

結果、手裏剣はハイデッカーの背中を切り裂くだけに留まった。
手裏剣はユフィの手元に戻り、そのせいで潜んでいた二人の位置も露呈する。

諦めきれないシユウは、ルーファウス目掛けてクナイを投げたが、本人に弾かれて舌打ちを零す。

「仕方ない。お嬢、退きましょう」

「今の、絶対当たってたのに! 邪魔すんなぁっ!」

警備兵の反撃を凌ぎながら、シユウは会場目掛けて煙玉を投げた。
煙幕で敵の視界が塞がれている間に、ユフィを連れて一気に下まで降りる。

「どうする?」

「一旦ここから離れましょう。港に船が停まってました。あれに乗れば別の大陸まで行けます」

「ルーファウスは!?」

「……悔しいですけど、今回は諦めるしかありません」

「くっそ〜!」

恐らく姿を見られているだろうと、シユウは変化の術を自身とユフィにかけて、黒マントになりすます。
一方、クラウド達はバレットやレッドと合流する。

「さっきの、ユフィ達だよね?」

「ああ。シユウの野郎、お前らがルーファウスの近くに居るって分かってただろうによ……」

ルーファウスはクラウド達の正体を見抜いていた。
あの状況で攻撃をすれば、神羅の者達は皆、クラウド達が共謀したと思うだろう。事実そうなっている。

幸いハイデッカー達はルーファウスの身の安全を優先したようで、交戦にはならなかった様だが。あの場で捕えられていてもおかしくは無かった。
それらを承知で、シユウは暗殺を優先したのだ。

バレットはやり切れない感情を振り払って、今は逃げるのが先だと気持ちを切り替える。

「さあ、どうする?」

「たった今黒マントを見た。港へ行くらしい」

「俺達も行こう」

「警備がヤバいぜ。強化された」

「変装で暫くは行けるだろう。あんた達は先に行ってくれ。俺は残って、第七歩兵連隊を港から引き離す」

「一人で大丈夫?」

「ああ。一人の方がやり易い」

港で落ち合うことに決めて、クラウドは部隊の兵を引き連れてアルジュノンへ向かう。
他のメンバーは、騒然としている通りを抜けて港へ。

「乗るの、チケットとか、要るかな?」

「多分。どこかで買えるかな……」

「買えたとしても無理だろ。見ろよ、チェックされてるぜ」

船で逃げようとすることは神羅も想定済みなのだろう。乗り口に居る兵士が、一人一人の客の顔を手配書と照らし合わせて確認している。

「何か別の方法を考えるしかないな」

「貨物にでも紛れるか?」

「もう殆ど運び込まれちゃってるよ」

「でも、後ろから、コッソリ入れそう」

ほら、と、エアリスは船尾の方を指した。
貨物の搬入用だろう跳ね橋があるのが見える。今は上がっているが、利用時には下がって通れるようになるようだ。

「流石に乗り込む時に声かけられるだろ」

「そこは、上手く誤魔化すの」

「じゃあ、あとはクラウドを待つだけだね」

船員を騙す為の嘘を考えようと、皆は港の隅で輪になって話す。
クラウドが心配で、頻りに街の方に目をやっていたティファは、同じように街を見ているバレットに気付く。

「心配だね。大丈夫だとは思うけど……」

「オレは心配なんかしてねぇよ。怒ってんだ。下手したら、ルーファウスじゃなくお前らが死んでたかもしれねぇ」

「え? ……ああ、なんだ。そっちか」

「なんだよ?」

「ううん。なんでもない。そうだよね。シユウさんのことも……気になるよね……」

寂しげに言うティファに、伍番街スラムでのやり取りを思い出して、バレットがその肩に手を乗せた。

セブンスヘブンのメンバーの中で、シユウのことを誰よりも信頼していたのは彼女だろう。
アバランチのメンバーではなくとも、ティファは彼のことも大切な仲間の一人だと思っている。逆の立場だったなら、ティファは彼に危険が及ぶような選択はしなかった筈だ。

だがあの男は、自分の目的の為にティファを切り捨てた。
そう思うと殊更に腹が立って、バレットは顔を顰める。

「……あいつ、次に会ったらただじゃおかねぇ」
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