05.SecretDesire

コスモキャニオンからニブルヘイムへは陸路は繋がっていない、との事で。一行は再びシドの世話になることになった。

前回同様、バレットに握られているトンベリ姿のシユウは、タイニーブロンコの貨物置き場で窮屈そうにしているバレットの指を叩く。

「またかよ。着くまでガマンしてろって」

違うと首を振って、トンベリはクラウド達が座っている機体前方を指した。

「前行きてぇのか?」

違う違う。

「じゃあ何だよ」

意思の疎通が取れず困り果てるトンベリに、やり取りを見ていたケット・シーが占い用の短冊とペンを差し出した。
トンベリは両手でペンを持って、「ティファ」「クラウド」「ニブルヘイム」「何?」と書かれたよれよれの字をバレットに見せる。

「その話か……まあ、後でしてやるよ」

そう言って、バレットはトンベリをゴムボールのように弄ぶ。
じゃれ合っている間に、タイニーブロンコは無事ニブル空港に着陸。送迎を終えたシドは、皆を降ろして颯爽と飛び去っていく。

「ケット・シー、ニブルヘイムは5年前に燃え落ちた。端末が残っていても、使えるかどうか……」

「5年前の事件のことは知っとります。でも、端末の心配なら無用ですわ。あそこは今でも、神羅の重要施設ですから」

「魔晄炉の事か?」

「あ〜、それもですが……」

「よくわっかんないけどさ〜、端末で調べない限り、黒マテリアの場所、分かんないんでしょ? んじゃ、行くしかないじゃん」

「うん…………そうだね。行ってみようよ」

「あれから帰ってねぇんだろ?」

「ああ。5年ぶりだな」

「私も……全部燃えちゃったって聞いたから、帰っても仕方ないだろうなって」

「……いいのか?」

気遣わしげに問うバレットに、「あれから色々ありましたから」とティファが答える。
明らかに無理をしている時の顔と声だとシユウは思った。クラウドよりも、ティファの方がより張り詰めているように見える。

空港から村へ向かうまでの道には、点々と黒マントが立っていた。
彼らもニブルヘイムへ向かってのろのろと歩いており、村へ近付くにつれてその数は増えていく。

そうして辿り着いたニブルヘイムは、「燃え落ちた」という話とは裏腹に、普通の村としてその場所に在った。

「どういう事だよ、こりゃあ」

「クラウド、見て。ほら、これ新しいよ」

ティファは村の名を掲げている門の柱を撫ぜて、汚れが付いていない指をクラウドに見せる。
門だけでは無く、村の中にある建造物も、比較的新しく見えた。少なくとも、ここで火事の類があったようには見えない。

「作り直したんだ、村ごと……」

「でも、誰がこんなことしたんだ?」

「…………神羅」

「さ〜て、端末を探しましょ!」

唯一その真相を知っていそうなケット・シーは、そう言ってさっさと村の奥へ。
ゾロゾロと村へ入ってくる一行を、住民達は怪訝な顔で見る。

「黒マントだらけだな」

「うん。それに村の人達も……知らない人、だよね」

一体どうなっているのか。
困惑していると、村の管理人だという男性に声をかけられる。

「この村に何かご用ですか?」

「ど〜もど〜も! ボク、神羅リゾートの社員です。神羅のネットワーク端末をお借りしたくて、ちょっと寄らしてもろたんですわ〜」

「後ろの方々は?」

「この人達は――」

ケット・シーが当たり障りない答えで流す前に、ティファが進み出る。

「ここは、私の故郷……でした」

相手は納得して、今のニブルヘイムのことを教えてくれた。
5年前から、神羅カンパニーの直接管理区域になっていること。村全体が、魔晄中毒患者の療養所として使われていること。

端末は村役場にあるとのことで、ケット・シーはそちらへ向かう。

「権利関係は処理済みと聞いています。何か問題がある場合は、本社の特殊施設管理課へご連絡頂けますか。故郷が懐かしい気持ちも分かりますが……どうか、早々にお引取りを」

それだけ伝えて、男は足早に去っていった。
忙しいのだろう。他の村人――黒マントの世話係だろう人達も、皆それぞれの仕事をせっせとこなしている。

端末で目当ての情報にアクセスするには少し時間がかかるとのことで、他のメンバーは終わるまで村で待機することに。
シユウはタイニーブロンコで聞きそびれた話の続きをバレットに頼み、落ち着いて話が出来る場所を探して、宿屋のロビーに行き着く。

「オレもカームであいつらから話聞いただけだからよ。全部把握してる訳じゃねぇぞ。1から10まで知りてぇなら、本人に聞けよ」

「でもこの話って、二人にとってはトラウマみたいなものじゃないんですか? 聞いて思い出させるようなことになると嫌ですし……」

「あ〜……それもそうだな」

納得したバレットは、時系列順に5年前の出来事を語る。

5年前。老朽化した魔晄炉の調査の為に、ニブルヘイムへ調査隊が派遣された。
メンバーは、神羅兵が数名と、ソルジャーが二名。当時まだソルジャーとして在籍していたクラウドと、英雄セフィロス。

当時村にいたティファは、その調査隊を魔晄炉まで案内するガイドを務めていた。
調査隊が村に到着してから魔晄炉へ行くまでは、記念撮影をしたり、談笑したり、和やかなムードだったと言う。

「クラウドの話じゃ、そん時のセフィロスはまだまともだったらしいぜ。クラウドは子供ん時からずっと憧れてたんだとよ」

「へぇ。今はまともじゃないんですか?」

「おうよ。その魔晄炉の調査中に、急におかしくなったらしい」

魔晄炉内にあったのは、神羅の科学部門、宝条博士の研究室。
本来、人工マテリアを生み出すための装置の中に、宝条は動物や人間を入れて、人為的にモンスターを生み出していた。
それを見たセフィロスは、自分もそうして生み出されたモンスターなのではないかと疑いを抱く。

「発想が突飛ですね」

「まあソルジャーも、なる時に魔晄を浴びせられるって話だからな。あと、セフィロスの母親の名前がジェノバなんだってよ。ジェノバのことは知ってるか?」

「聞いたことありません。何ですかそれ」

「オレもまだよく分かってねぇが……すげぇ昔の古代種だか何だかって話だったか。ガストとかいう研究者が、それを甦らせようとして……」

「古代種? セフィロスは古代種なんですか? でもコスモキャニオンで、エアリスさんは古代種はもう自分しか居ない≠チて言ってましたよね」

「ああ。だからセフィロスの野郎は、古代種を甦らせる為の実験で生まれた別のモンなんじゃねぇか。セトラの末裔とか、そういうのじゃなくてよ」

「……人為的に創られた生物ってことですか?」

「セフィロスはそう思ったんだろ」

真相を探る為に、セフィロスはニブルヘイム郊外に建つ研究施設、通称「神羅屋敷」に籠り、数日かけて過去の資料を読み漁った。
そこで、古代種を復活させる計画、ジェノバ・プロジェクト≠フ存在を知り、先の結論に至る。

「んで、トチ狂ったセフィロスが村焼いて終わりだ」

「はい? なんでそれで村を焼くんですか」

「ガキの癇癪みてぇなもんだろ、多分」

「傍迷惑な話ですね……」

「その上、ティファはその時にセフィロスに斬られたらしくてな。ほら、コレルでシロン先生と話してただろ」

「ああ、そこに話が繋がるんですか」

かつてセブンスヘブンを買い取る時に、ティファが言っていた借金の話も、恐らくはその延長線上にあるのだろう。

という事は、ゴンガガの魔晄炉でティファがクラウドに見せていた胸の傷はそれか。
そう言えば、あの時クラウドはジェノバの名を口にしていた。

「……かつてジェノバは、愛する者、恐れる者の姿で人に近付き、欺いた=v

「ああ? なんだ、それ」

「ゴンガガで、様子がおかしくなったクラウド君が言ってたんです。古代種ってそんな能力があるんですか?」

「さぁな。エアリスに聞いてみろよ。とにかく、オレが知ってんのはこんだけだ」

「大体把握出来ました。有難うございます」

「結局、セフィロスがおかしくなったのも、ニブルヘイムが燃えたのも、元凶は全部神羅だってこった。自分達の都合でブチ壊したり、かと思えばニセモノを作ったりよ……何でも神羅の思い通りってか? そうはさせるか!」

怒りを滾らせるバレットに、シユウも冷静に賛同。

「セフィロスも、どうせなら神羅に復讐してくれれば良かったのに」

「まったくだ。無関係の奴らを巻き込みやがってよ……」

「ティファさん……クラウド君も、大丈夫ですかね」

「大丈夫ってことはねぇだろ。さっさと用事済ませて、村から離れようぜ」

そろそろケット・シーの方も終わったかと様子を見に行くと、役場の中からケット・シーの猫々しい悲鳴が聞こえてきた。
クラウド達もその声で集まってくる。

「なんだよ、シッポでも踏まれたか?」

「ちゃいます。この端末からじゃダメですわ。アクセス出来る範囲が制限されとります」

「つまり、情報は手に入らない」

「諦めるんは、まだ早いですわ! 管理人はん、あのお屋敷に入れて貰えませんやろか?」

「私のカードでも、あそこには入れません。上司と交渉して下さい」

「ジョーシ! カチョーはん? ブチョーはん? 何処に居りますのやろ?」

「ムラサキ課長は、本社からの点検依頼で、ニブル魔晄炉に滞在中です。明後日には戻る予定ですが……昨日から連絡無いんですよね。遅れるかもしれませんねぇ」

流石に何日もここで帰りを待つ訳にはいかないので、自分達の方から出向くことに。
とは言え、ただカードキーを借りる為だけに、全員で山を登る必要も無いだろうと、クラウドは一人で向かおうとしたが、

「はい、ハイハイハイ〜! アタシも行く!」

「私も」

と、ユフィとティファが同行を申し出た。

ユフィはともかく、ティファは魔晄炉には近付かない方がいいのではないかと、クラウドは断ろうとしたが、ガイドが必要だろうと言われて渋々承諾する。

「お前ら、大丈夫か?」

「山に登ってカードキーを借りるだけだ。問題ない」

それはそうだろうが。
心配そうなバレットを置いて、歩き出した三人の後ろをシユウがついて行く。

「あんたも来るのか?」

「村で待ってても、他にやることありませんし。お嬢が何かしでかさないか心配なので」

「もー、そういうの要らないってば!」

「ユフィはどうしてついて来たの?」

「だって、天然のマテリアがあるんでしょ? さっきクラウドに聞いたよ」

やはりそういう目的かと、答えが予想出来ていた他三人は苦笑した。
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