12.音速十光年

「ああ、おかえり二人とも。ちょっと待っててね。もうすぐ夕ご飯出来るから」

「聞いてくれよ、今日はアルノルドが大きな猪を仕留めたんだ。一人でだぞ!」

「まあ! もう立派な狩人ね、すっかり大人になって」

「子供の成長は早いよなぁ。父さんがお前くらいの歳の頃には――――」






「アルノルド! さっきアレクセイ団長が褒めてたぞ、こないだの遠征!」

「ああ、大活躍だったらしいな。新人に手柄を取られて、先輩方が怒ってたぞ」

「ほっとけほっとけ。これからの騎士団に必要なのはそういうお貴族様じゃなくて、アルノルドみたいに実力のある騎士なんだから」

「あ、ちなみにその閣下だけど、今日は新しい魔導器が見つかったから、予定をキャンセルしてそっちに行ったよ」

「ええ!? しょうがない人だなあ〜、魔導器が絡むと子供みたいになられるんだから」

「いいじゃないか、金と権力にしか興味が無い奴らよりはよっぽど健全で」

「そうは言うが、騎士団長ともあろう人にそう易々と予定を変更されると、下にいる俺達はだな――――」






「おお、アルノルドか! 丁度いいところに来たな、明日の任務のことなんだが……」

「はいはい、お仕事の話は後でね。ご飯出来たから、皆で一緒に食べましょう?」

「お兄ちゃん! あのね、今日お友達と一緒にお花摘んで来たの! それでね、お母さんに教えて貰って冠を作ったんだけど……」

「それも後で。ほら、手を洗ってきなさい。……もう、皆アルノルドさんが来るといっつもこうなんだから。騒がしくってごめんなさいね?」

「別にいいだろ。なあ? ほら、こいつも喜んでるぞ」

「まったく……あ、ご飯足りなかったら言ってね」

「そうだぞ、もっと食え! 騎士団は体力勝負なんだから、そんな少食じゃあ全然――――」











空が白み始める時間帯。アルノルドは、寮内の自室で目を覚ました。

心臓が早鐘を打っている。額には汗が滲んで、喉は乾き切っていた。

夢を見ていた気がする。それがどんな内容だったかは思い出せないけれど、悪い夢では無かった気がする。それなのに、息が出来ないほど胸が苦しい。

叫び出したい気持ちだった。けれど何を叫びたいのかがわからない。
口を開いても言葉は出てこなかった。代わりに嗚咽が漏れて、涙が枕を濡らした。
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