04.日輪を亡くした月
宿の部屋に着くなりラスヒィはベッドの上に突き飛ばされ、やわらかい布団とはいえ傷だらけの体は痛み、短い呻き声が上がった。起き上がる間もなくアルヴィンに組敷かれて、身動きが取れなくなる。
「何でガイアスのとこになんか行ってんだよ」
「それは……外で、声をかけられて……」
「声かけられたら誰でもついて行くのか? それで一緒にお風呂入って可愛がってもらったってか」
「一緒じゃ──ッ!!」
首筋を舐められて、ぞわりとラスヒィの体が震えた。
以前の行為を思い出して、二度もされてたまるかと全力で抵抗する。
だが振りかざした腕は頭の上で押さえられ、蹴り上げた足は手と上体で押し広げられた。
「俺とは口も利かなかったくせに、あいつとは随分仲良くやってたみたいじゃねーか」
「そ、れはっ、アルヴィンが……ッ!」
「俺が、なんだよ?」
聞いておいて答えされる気はないのか、口を塞ぎ舌で口内を犯してくる。
ガイアスに貰った服は力任せに剥ぎ取られ、巻かれていた包帯さえも取り払われた。
「へえ、綺麗にしてもらってるじゃねーか。俺も消毒してやるよ」
「痛っ! ッルヴィ、ン、やめ……」
わざと傷口ばかりを狙って指や舌で刺激してくる相手に、ラスヒィは必死に懇願するもやはり聞き入れては貰えず。
中途半端に足にかかったままだったズボンは、抵抗のためにばたばたと動かしたせいで完全に脱げてしまう。
はぁはぁと必死に酸素を取り込もうと呼吸を繰り返す口から、どちらのものとも知れぬ唾液がしたたり落ち、弄られている下半身のものからは同じように先走りが溢れていた。
「あァッ……も……もう……ッ、……ん、とに、やめ……んンッ」
「聞こえねーなぁ。もっとハッキリ言えよ!」
「……ッ!!」
惨めな気持ちを煽るように、怒気を孕んだアルヴィンの声が、ラスヒィの鼓膜を奮わせる。
容赦なく扱かれたせいで前よりも早く達してしまい、反り立った竿からピュルピュルと精子が飛び出していく。
「はぁ……っ、はぁ……、も……やめて……」
「旦那は自分に甘いからなぁ。俺がしっかり鍛えてやるよ」
腹に乗ったその液を指ですくって、アルヴィンはそれを下からラスヒィの体の中に押し入れる。
突如やって来た異物感と僅かな痛みに、達したばかりで力の抜けていたラスヒィの体が大きく跳ねた。
「ヒッ──やッ!?」
「なんだ、思ったよりキツいな。もしかして処女?」
「は……っ!? 何を……!」
「城ん中でこういうことしてねーの? そんな綺麗なツラで、よく今まで誰にも襲われなかったな」
「なに……言って……んッ、あっ、痛ッ……! やめ……!」
「はいはい。じゃあ気にならねーように、他のとこも弄ってやるよ」
「ひィッ、や──ッ!!」
傷口を舌でえぐられ、溢れた血をアルヴィンが舐め取る。
確かにこれでは抜き差しされる指による痛みなど気にはならないが、こんな紛らわせ方ならされないほうがマシ。
「〜〜ッルヴィン、アルヴィン……ッ! だめ、もう……!」
「何だよ?」
「やめ、やめて……下さっ、い……! お願い……しますからぁ……ッ!」
本数の増えていく指と広がっていく傷口に、羞恥心よりも何よりも恐怖が勝って泣きつく。
沈黙のあと、アルヴィンは指を引き抜いてくれた。
気が済んだか。
悪夢の出口が見えてラスヒィが安心した瞬間、さっきまでとは比べ物にならないほどの激痛が下半身に走った。
「──────ッ!?!?」
「残念、今の俺は機嫌が良くないんでね」
さっきまで指に犯されていたそこに、明らかに別のものが捻じ込まれている。
アルヴィンの腰の動きに合わせて突き上げてくるそれが何なのかを理解して、ラスヒィはパニックになって叫ぶ。
「っやだ! っに、してっ、るんッです、か、あッ! やっ! はっ、んぁっ、やめっ! 抜いっ、やめて……!」
「はっ!いいザマだな旦那ぁ!」
「んっ、あッ、やだ、やだぁっ!」
中が裂けて溢れてくる血などお構いなしに打ち付けられて、それでも痛みの奥からジワジワと染み出してくる確かな快感を、ラスヒィは信じられない気持ちで受け止める。
「あんっ、んんッ、なんで、やだ、違う、こんなの、こんな、の……! クレイン、クレイン! クレ──」
乱暴に口付けられて、愛しい人の名を呼ぶラスヒィの声はかき消された。
口内を荒らす舌に抵抗する気力はもう残っていない。
「……っ二度とその名前呼ぶんじゃねぇ。次言ったら舌噛み切るぞ」
「っひ、っぐ、……ッ!!」
ふるふると左右に振った頭は何を意味するものなのか、自分でもわからなかった。
全ての事が、ただ怖くて怖くて仕方が無い。
「お前は俺のもんだ、俺のもんなんだよ……ッ! 俺を見ろ、俺の名を呼べ!!」
「っや、嫌、いやだ……やだ……っ! ァあっ、んあ……ッ!!」
パンパンと響く卑猥な音と、火照った体、滲んだ視界。
開きっぱなしの口から出てくるのは、嬌声と唾液と荒い呼吸。
快感に侵され制御不能に陥ったラスヒィの体は、意思に反してアルヴィンを求め始める。
わからない、もう、なにもわからない。
「くっ……そろそろイくぞ……!」
「んっ……! あ……ッ!」
アルヴィンの体がラスヒィの内腿の間で震え、ラスヒィは自分の体の奥深くに彼の精子が注がれるのを感じた。
経験したことの無い、強過ぎる快感に襲われた体は絶頂を迎えて痙攣し、それでも尚動くのをやめないアルヴィンによって限界を迎えたラスヒィの意識は、黒く塗りつぶされていった。