03.空を翔けるは銀の翼

「マクガヴァンさん! みんな! 大丈夫ですか?」

無事着陸したアルビオールからルーク達が飛び出してくる。
待ちに待った救世主の到着に、ようやく皆の顔に笑顔が戻った。

「ディル、待たせてごめん! とにかく乗ってくれ!」

「いや、先に街の人を乗せてくれるか? 怪我してる人も居るんだ」

残された住人を一人ずつ誘導してアルビオールに乗せる。なんとか全員が収まりそうだった。

「さあ、あとはディルだけだぞ」

「ああ、ありが……」

乗り込もうとしたその時、大地が再び大きく振動し、地面が更に下がった。
よろけて機体に掴まり損なった手を何かが掴む。

「……お疲れ様です、ディル」

逆行で光る眼鏡の奥の瞳はきっと、こんな自分を笑っているんだろうと思いつつ、ディルはジェイドの手を握り返して「そっちもな」と苦笑した。






「有難う御座います、貴方のおかげで命拾いしました」

「そんな、助けてくれたのはこのアルビオールを持ってきてくれた皆です。俺は何も……」

ぬいぐるみを抱えたままの女性に頭を下げられて、ディルは困り顔でぶんぶんと両手を振った。

アルビオールの中はたくさんの住民ですし詰め状態だ。窮屈といえばそうだが、つまりそれだけの人数を救えたということで。そこに不満を溢すものは居なかった。

「助けていただいて感謝しますぞ。しかし、セントビナーはどうなってしまうのか……」

「今はまだ浮いているけれど、このまましばらくすると、マントルに沈むでしょうね……」

「そんな! 何とかならんのか!?」

「ここはホドが崩落した時の状況に似ているわ。その時は結局、一月後に大陸全体が沈んだそうよ」

「ホド……、そうか、これはホドの復讐なんじゃな……」

老マクガヴァンの呟きに殆どの者は首を傾げたが、数名はその言葉の真意を理解して押し黙る。

「……本当に、なんともならないのかよ」

「住む所がなくなるのは可哀想ですの……」

「大体大地が落っこちるってだけで常識外れなのにぃ、なんにも思いつかないよ〜、超無理!」

「そうだ、セフィロトは? ここが落ちたのは、ヴァン師匠がパッセージリングってのを操作して、セフィロトをどうにかしたからだろ。それなら復活させればいいんじゃねーか?」

「でも私たち、パッセージリングの使い方を知らないわ」

「じゃあ師匠を問い詰めて……!」

「おいおいルーク、そりゃ無理だろうよ。お前の気持ちもわかる……」

「わかんねーよ! ガイにも、みんなにも!」

悲痛な面持ちで叫ぶルークに、皆が言葉を無くす。
ルークは感情のままに言葉を吐き出し続けた。

「わかんねぇって! アクゼリュスを滅ぼしたのは俺なんだからさ! でもだからなんとかしてーんだよ! こんなことじゃ罪滅ぼしにならないってことくらいわかってっけど、せめてここの街ぐらい……!」

「ルーク! いい加減にしなさい。焦るだけでは何もできませんよ」

それを諌めたのはジェイドだった。
珍しく彼に叱られたルークは、皆と同様に口を噤む。

「とりあえずユリアシティに行きましょう、彼らはセフィロトについて我々より詳しい。セントビナーは崩落しないという預言が狂った今なら……」

「そうだわ、今ならお祖父様も力を貸してくれるかもしれない」

「それとルーク、先ほどのあれではまるで駄々っ子ですよ。ここにいるみんなだって、セントビナーを救いたいんです」

「……ごめん、そうだよな……」

「まあ、気にすんな。こっちは気にしてねぇから」

「では、アルビオールを発進させます」

小さくなったルークをガイが元気付ける。
赤黒い霧の中をアルビオールが進み、ユリアシティの入り口で皆を降ろした。そこにはテオドーロの姿もある。

「お祖父様!」

「来ると思っていた」

「お祖父様、力を貸して! セントビナーを助けたいんです」

「それしかないだろうな。預言から外れることは、我々も恐ろしいが……」

「お話の前に、セントビナーの方たちを休ませてあげたいのですが」

「そうですな、こちらでお預かりしましょう」

「……お世話になります」

「ディル、貴方も休んでください。ずっと皆を気遣って疲れたでしょう」

「いや、俺は大丈夫……」

「無理はいけませんわよ。話が纏まったらちゃんと呼びに行きますから、さぁ!」

イオンやナタリアに押されて、ディルは住民やマクガヴァン親子共々強制的に部屋へと運ばれる。
テオドーロもそれに続いて行こうとしたが、ふと立ち止まった。

「ルーク、あまり気落ちするなよ」

「え?」

「ジェイドは滅多なことで人を叱ったりせん。先ほどのあれも、おまえさんを気に入ればこそだ」

「元帥! 何を言い出すんですか」

「年寄りには気に入らん人間を叱ってやるほどの時間はない。ジェイド坊やも同じじゃよ」

ジェイドはそんなことはないと言いつつも、ルークの傍にいられなくなったのか後をついてくる。
どうやら図星らしいことはその場にいた全員が察した。

それらを見聞きしたシブレットは、先ほどまでとは一転して瞳を輝かせる。

「――ってことは、よく怒られてる俺のことも、大佐は気に入ってくれてるってことですよね!?」

「何がそんなに嬉しいんですか。貴方がそれだけ叱られるようなことをしているというだけですよ」

「すみませーん以後気をつけまーす!」

明らかに口先だけの宣言をして浮き足立っているシブレットに、ガイは「よほどジェイドに懐いてるんだな……」と自分の苦労を嘆いた。
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