03.空を翔けるは銀の翼

休憩を強いられたディルを除いた皆が会議室に揃ったところで、ルークが本題に入るべく口を開く。

「単刀直入に伺います、セントビナーを救う方法はありませんか?」

「難しいですな、ユリアが使ったといわれるローレライの鍵があれば、或いは……とも思いますが」

「ローレライの鍵? それは何ですか? 聞いたことがあるようなないような……」

「ローレライの剣と宝珠のことを指してそう言うんですよ。確か、プラネットストームを発生させる時に使ったものでしたね。ユリアがローレライと契約を交わした証とも聞きますが」

「そうです、ローレライの鍵は、ユリアがローレライの力を借りて作った譜術武器と言われています」

「ローレライの剣は第七音素を結集させ、ローレライの宝珠は第七音素を拡散する。鍵そのものも第七音素で構成されていると言われているわ。ユリアは鍵にローレライそのものを宿し、ローレライの力を自由に操ったとか……」

「その真偽はともかく、セフィロトを自由に操る力はあったそうです」

「でもローレライの鍵は、プラネットストームを発生させた後、地盤に沈めてしまったと伝わっているわ」

「その通り。この場にないもの――いや、存在するかもわからぬものを頼る訳にもいかないでしょう。何より、一度崩落した以上、セントビナーを外殻大地まで再浮上させるのは無理だと思います」

「うーん、どうしようもないのかなあ」

「あー俺、頭痛くなってきた……」

「ちょっと謡手、寝ないで下さいよぅ」

机に突っ伏すシブレットをアニスが無理やり起こす。
シブレットはこんな難しい会話よく続けてられるなと項垂れた。

「液状化した大地に飲み込まれない方法なら、或いは……」

「方法があるんですか!?」

「セフィロトはパッセージリングという装置で制御されています。パッセージリングを操作して、セフィロトツリーを復活させれば、泥の海に浮かせるぐらいなら……」

「セントビナー周辺のセフィロトを制御するパッセージリングはどこにあるの?」

「シュレーの丘だ。セントビナーの東だな」

「……あ、そういえば、俺がアッシュ達と一緒にイオン様を保護したときに行った場所って、そのあたりじゃありませんでしたっけ?」

「保護じゃなくてあれは誘拐ですよぅ!」

「そうですね。あのときはまだアルバート式封咒とユリア式封咒で護られているからと、心配していなかったのですが……」

「アルバート式封咒は、ホドとアクゼリュスのパッセージリングが消滅して消えました。しかしユリア式封咒は、約束の時まで解けない筈だった」

「でも総長はそれを解いてパッセージリングを操作したってことですよね」

「そうです。どうやったのか、私たちにもわかりません」

「グランツ謡将がどうやってユリア式封咒を解いたかは後にしましょう。パッセージリングの操作はどうすればいいんですか?」

「第七音素が必要だと聞いています。全ての操作盤が第七音素を使わないと動かない」

「それなら俺たちの仲間には、三人も使い手がいるじゃないか」

「私とティアとルークですわね」

「えー、四人だぞ。俺も使える」

上体を机にくっつけたまま、へにゃへにゃと腕を上げるシブレットに視線が集まる。

「そうなんですの?」

「初耳ですよ。使っているところは見たことがありませんが……」

「だって普段使うような場面なんてそうそう無いじゃないですか。一応、第一から第七まで全部使えます。ただ……」

「ただ?」

「すごく疲れるんであんま使いたくないです」

「もー、真面目にやって下さいよぅ!」

「あとはヴァンがパッセージリングに余計なことをしていなければ……」

「それは行ってみないと分からないわね」

「セントビナーの東あたりなら、たぶん街と一緒に崩落してるよな」

「それじゃあ、私ディルを呼んで来ますわね」

席を立とうとするナタリアを手で制して、ジェイドが立ち上がる。

「私が呼んで来ますので、皆さんは出発の準備をお願いします」

「……? え、ええ、わかりましたわ」

なんでわざわざと言いたげなナタリアを置いて、ジェイドは足早にディルやセントビナーの民が待機している部屋に向かった。

「……休んでおくようにとイオン様に言われていた筈ですが?」

物資を抱えて皆に配って回っているディルがジェイドに気付いて振り向く。
「俺はもう休んだ」と言うが、その目線は泳いでいた。

「次へ行く場所が決まりました。時間が無いのですぐにでも発つことになると思いますが、準備は宜しいですか?」

「ああ、分かった」

「それから、一つ質問が」

何度目だろうと思いながら、ディルは渋ることなく「どうぞ」と返す。
部屋を出た二人はアルビオールへと歩き出した。

「次に向かう場所でパッセージリングという、セフィロトを制御している装置を操作しなければならないんですが……どうも動かせるのが第七音素を使える者だけのようなんです。ルークやナタリアが居るので問題はないと思いますが、貴方が使えるかどうかも一応伺っておこうかと」

「ああ……悪いけど、俺は使えないよ。俺が使えるのは第一から……そうだな、第五あたりまでが限界かな」

「……そうですか」

難しい顔をして黙ってしまうジェイドに、「他の皆が使えるのなら問題はないだろ?」と言うと、そうですねと簡潔な言葉を返された。
言葉とは裏腹に曇ったままの表情の相手にディルも考え込む。

だが答えは出ぬまま、真剣な顔をした二人はアルビオールで待機していた仲間に「何かあったんだろうか」と思われつつ、皆と共にシュレーの丘に向けて出発した。
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