01.それは終局への幕開け

ユリウスのことを知っているらしい人物が居るというヘリオボーグへとやって来た一行が最初に目にしたのは、研究所の入り口に出来た人だかりだった。

「か、関係者以外は入らないで!」

「なにかあったんですか?」

「ああ、ジュードさん。それが……」

「ダメだ、完全に警備システムを押さえられてる」

建物から出てきた男が、若い研究員の言葉を遮る。
明らかに研究員ではなさそうなその出で立ちの男に、知り合いなのかジュードが反応した。
男も、こちらを見るなりぼやくのを止める。

「アルヴィン!」

「おっと、こりゃまたいいタイミングで。ローエンとレイアまでお揃いか」

2人とも知り合いらしく、ローエンは小さく会釈、レイアは元気に手を挙げて応えた。

その男、アルヴィン曰く、今研究所はアルクノアに警備システムを制圧されてしまっているらしい。

「しかも、見学に来ていたリーゼ・マクシアの親善使節が中に」

「案内してたバランも一緒なんだと」

「バラン!?」

突然出てきたご近所さんの名前につい声を上げると、アルヴィンの視線がこちらに向いた。

「……ジュード君のお友達?」

「あ、うん。ついさっき知り合ったばかりだけど……」

「へぇ……んで、バランの知り合いか?」

「知り合いっつーか……近所に住んでて」

「僕たち、バランさんを探してるんだ」

「……あ? って、もしかして、ユリウスの情報知ってそうな奴って……」

「バランさんだよ」

しれっと言ったレイアに、盲点だったとシンは頭を抱える。

まさかこんなに身近にユリウスの手がかりを持っている人が居たなんて。
マンションに居るときにもっと話しておくんだった。いや、まだ知っているかもしれないというだけだが。

「おたく、名前は?」

「……シン」

「そっちのあんたは?」

「ルドガー」

「シンとルドガーな。これはアルクノアのテロだ。俺、元アルクノアなんだけど、信用してくれるか?」

とんでもないことをなんでもないように言ったアルヴィンに、シンの顔が引きつる。

だがルドガーはというと、

「信用するよ」

即答だった。

「なるほど、ジュードの友達って感じだな」

「アルヴィンはジュードの友達じゃないの?」

「ん……どうかな?」

「友達だよ」

言葉を濁らせたアルヴィンに代わって、ジュードが苦笑しながら答える。
それを見たエルは「なんか信用できなそう」と素直な感想を漏らした。

「子供の目はごまかせないな。あんたは?」

「俺は別に、ユリウスの情報が聞ければそれでいい。あんたがもし俺らを騙してたとしても、そんときゃー敵ごとあんたをブチのめしゃいいだけだしな」

「へぇ、おたくは俺と気ぃ合いそうだな。そんじゃ、まあよろしく」

「状況を確認しよう。バランさんと見学者が閉じ込められているのは?」

「開発塔の屋上付近かと」

「警備システムの制御室は?」

「研究塔の最上階にあります」

「では、二手に分かれましょう。制御室は、私とレイアさんで」

「バランさんのこと任せたよ」

レイアとローエンは2人で先に研究塔へと走り出す。
雲行きの怪しくなってきた空を見て、アルヴィンが自分たちも急ごうと先導した。








「ったく、次から次へと……」

中はアルヴィンの話通り、警備ロボやらアルクノアやらで占領されていた。
進むごとに行く手を阻んでくるそれらを蹴散らしつつ先へ進んでいく。

「ごっつい武器だなあんた、傭兵か何か?」

「おっ、いい読みしてるな。でも残念、元・傭兵だ」

「シンも随分強いけど、学生さん……だよね?」

「あんたこそ、服装とのギャップすげーぞ。っつーか、マティスってなんか聞いたことある気すんだけど?」

「ジュードは有名人だもんね!」

「あ?」

「源霊匣研究の第一人者」

「あーなるほど。──って、はぁ!? あのDr,マティスか!?」

そういった情報には疎い自分でも耳にしたことがある名前。
そういえば顔は見たことがなかったが、ここまでイメージと違うとは。

「……歳いくつだよ?」

「え? 16だけど……」

「16で世界的な有名人ね……」

「まあ、吃驚するよなあ」

口を動かしつつ足も動かして更に先へ進む。
今のところ問題なく来れてはいるが、アルクノア側の遠距離攻撃の嵐にはアルヴィンが舌打ち。

「バンバン撃ってきやがって……こっちももっと飛び道具が欲しいな」

「今のところ、アルヴィンだけだもんね……」

ジュードと自分は拳、ルドガーは剣と槌。どれもこれも近距離ばかりで、リーチでアルクノアに劣っている状態。

自分は鞄の中身を投げるという手段もあるのだが……と、何か投げても支障のないものはないかと探っていると、突如上空から1人の青年が降ってきた。
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