06.いつか花が咲く頃に
居住区まで移動した二人は、今日の宿代わりでもある個室に入った。マリクは内側から施錠して、開口一番ルーカスに一言。
「脱げ」
「え、何で。さっきと同じことするだけなら別に脱がなくても……」
「それだけで済むか。第一、服が汚れるだろう」
「……こんな明るい所で全裸になるの嫌だ」
「生娘か!? 誘っておいて今更何を恥ずかしがってるんだ、馬鹿馬鹿しい」
マリクはルーカスを捕まえて、ズボンを脱がし始める。抵抗しようとする言葉や態度と裏腹に、露になったそれは既に先走りを溢れさせながらヒクヒクと震えていた。
その痴態に喉を鳴らしながら、マリクがそこへ指を添わせる。包み込むようにして直に握られて、ルーカスが身体を跳ねさせた。
「やっ、やだ、待って」
「待たない。脱ぐのが嫌ならもうこのままやるぞ」
ズボンと下着を膝に引っ掛けた中途半端な状態のルーカスを後ろから抱き込んで、マリクはゆっくりと手を動かし始めた。空いた方の手は先程と同じように服の下の腹や胸をなぞり、逃げようとするルーカスを抑え込む。
刺激に屈したルーカスは逃げるのをやめて、マリクに体重を預けた。
「あ……ッ、ん……、はぁ……ッ」
「……気持ち良いか?」
「ん……ッ」
コクコクと頷くルーカスに素直になったなと笑いつつ、マリクはさっき軽く痕をつけたのと逆側の首筋を舐めて強く吸い上げる。それだけで、ルーカスは上擦った嬌声を上げて吐精してしまった。
ぱたぱたと飛び散った精液が、床に白い斑模様を作る。
「あ……っ、床、汚れちゃ……っ」
「……もうイッたのか、早いな」
「だ……、だって、さっきからずっと我慢して……」
はぁはぁと熱く荒い呼吸を繰り返すルーカスに、マリクはまだ僅かに硬さを保っているソレを捏ねるように擦り、濡れた先端を指の腹でぐりぐりと刺激した。
達したばかりで身体に力が入っていないルーカスは、不意の愛撫に息を詰める。
「待っ――、やめッ、だめ、待ってッ……!」
「お前が煽るからだ」
マリクは硬くなっているルーカスの胸の突起を抓りながら、再び張り詰めてきた陰茎を先程よりも強く扱いた。腰を動かしてズボン越しに反り立っている自分のものを擦り付けると、ルーカスはより一層甘い声で鳴く。
「マリクさ、あッ、アッ、あァ、ンッ」
「ここぞとばかりに名前で呼ぶな。……そうも感じられると、こっちも余裕が無くなってくるな」
ズボンの留め具を外して自分のものを取り出したマリクは、ルーカスの内腿を掴んで僅かに足を開かせた。出来た隙間に勃起したソレを差し込んで、ルーカスの脚で挟み込ませると、ゆっくりと前後に腰を揺すり始める。
何をさせられているのか理解したルーカスは、真っ赤になって腰を掴んでいるマリクの腕に爪を立てた。抗議のつもりだったのだが、マリクはそれを快楽に耐えているのだと誤解して、優しく腹や胸を摩る。
「んぁッ、……するッ、ならッ、ちゃんと、ちゃんとやって、ッ、てば……ッ!」
「ん? ちゃんとって何だ」
「こんな……ッ、立ったまま、脚で、するんじゃ、なくて……、ちゃんと、ベッドで……中に……ッ」
「それは駄目だ」
「なんで……ッ!」
「そうやってお前を抱くのは、きちんと挨拶を済ませてからじゃないとな」
捕らえられたままのルーカスは振り向いて、蕩けた顔でマリクを見つめる。
「挨拶って……、父さん、に?」
「ああ。見合い話が来てるんだろう? お前がオレの事は遊びで他の誰かと添い遂げるつもりなら別だが、そうじゃないなら断る上で説得が必要だろう」
「それは……そうかもしれないけど……、でも、父さんにそんな話したら卒倒されそ……ッ、んッ、ちょっと、話してる時に動かないでよ……ッ!」
「お前のその顔を見てると辛抱出来なくてな、すまん」
あちこち弄り回されながら腰を打ち付けられて、再び上ってくる絶頂の予感にルーカスは唇を戦慄かせた。
与えられる刺激もそうだが、今こうしてマリクと情を交わしている事や、相手が自分に興奮しているという事も、全て快楽となってルーカスを襲う。
マリクはそんなルーカスの耳元に顔を寄せて、吐息混じりに言う。
「やるべき事を全部終わらせたら……いくらでも抱いてやるさ。飽きるくらい何度も何度も、お前の身体がオレに馴染むまで……、時間をかけてじっくりと、な」
「〜〜〜ッ!!」
その声と言葉に耐えかねたルーカスは、マリクの足を思い切り踏み付けた。
「痛ッ! おい、蹴るな!」
「ばか、セクハラ、変態エロおやじ、いい加減にしてよ……ッ!」
涙声で罵詈雑言を並び立てるルーカスの耳が真っ赤になっている事に気付いて、それが照れ隠しだと理解したマリクは愛おしそうに笑った。
仕方なく言葉攻めは止めて行為に集中すると、悪態を吐いていたルーカスも次第に喘ぎ声だけを発するようになり、部屋には互いの呼吸音と身体の擦れる音が響く。
「ん……ッ、あぁ……ッ、駄目、も、イきそ……ッ!」
「ああ……、いいぞ、オレも……ッ!」
甲高い嬌声を上げて絶頂したルーカスに、少し遅れてマリクも射精する。お互いの吐き出したものが床に飛び散る様を、達したばかりの二人は惚けた顔で見つめた。
マリクはルーカスを抱きしめたままドアに背を預けてずるずると座り込み、長引く余韻のせいで時折痙攣するルーカスに顔を繰り寄せる。
「……満足したか?」
「ん……、でも、最後にもう一個だけ……」
「何だ?」
ルーカスは身を捩ってマリクの方を向くと、恍惚とした表情で言う。
「キスして。……だめ?」
マリクは面食らった顔をして、それからフッと笑った。
乱れて顔にかかっているルーカスの髪を指で払って、頬に添わせた手を頭の後ろに回して引き寄せると、どちらからともなく唇を重ね合わせる。
情事の後の余韻に浸るように、二人は暫くその深い口付けに没頭していた。