(中1�A)

前日に、及川からラインが届いた。場所と時間が書いてある。及川のバレーしてる姿を見るのははじめてだ。試合を見に行くなんて、少し緊張する。1年で出られるのは自分だけだって言ってた。及川も、緊張してるんだろうか。

1人ではなんとなく心細くて、クラスの友達を誘った。



練習試合当日。
わたしの緊張なんて紙くずに丸めてぽいっと捨てられるほどに必要のないものだったらしい。及川の活躍っぷりは素人目に見ても明らかだった。
セッターとしてコートに立った及川は、先輩だらけのメンバーのなかで息を吐く間もないテンポで、誰もが見惚れるようなスピードできれいなトスを上げてアタックを成功させていた。

でも、なによりすごいのはサーブだった。
ユニフォームの袖を肩までグッとまくってコートに立った及川は、ふぅ、とゆっくり息を吐いてからボールを上げる。
キュキュキュッと音を鳴らして跳んだ及川の手から、ドパッという強烈な音が響いたかと思いきやボールはもう相手のコートに入っていた。「イン!」と審判係の部員が叫び、ワァッと応援に来ていた女子達が湧く。
え、あの子すごくない?と、女子(おそらく先輩)が騒いでいるのがわかる。


「及川くん…すごいねぇ」
友達のことばにもうなずいてしまう。

私の知らない及川がいる。
どきどきする。
及川が、別人みたいだ。

試合中の及川は煽るような視線を送り相手を挑発したかと思いきや、点が入ればニカッと笑って先輩とハイタッチをかましていた。私のまだ知らない顔がこんなにたくさんあったんだなぁ。私の知ってる及川なんてほんの一部だったんだなぁ。

試合は2-1で及川達の勝ちだった。

ふいにこっちを向いた及川と目が合う。目が合うなりにやっと笑った及川に、私はどんな顔で返したらいいかわかんなくてとりあえずお疲れ、とだけ口を動かした。
首筋まで滴る汗に、体育館の高い天井から降り注ぐ光が反射してきらきらと光ってるのが見える。



試合が終わって、声をかけようか迷ってやめた。


落書きみたいな入道雲がモクモクと形作られていた。
なんだかチカチカする。目が眩む。
校門を出て友達と別れ歩いていると、アイスキャンディを食べながら手をつなぐカップルが楽しそうに通り過ぎて行って、このまま走り出したい気持ちになった。



ネバーエンドが滅びる日
170910