2019/10/31〜11/30
語り手:射場鉄左衛門
「焼き芋の季節じゃ!」
世間が南瓜だろうが蓮根だろうが、そんなの知るかい。秋といったら焼き芋じゃ。木枯らし吹いたら焼き芋じゃ。百年前からそう決まっとる。
裏山はこがいなときも便利じゃのう。下手な鬼道えっとぶっ放とうが、隠れて卍解の修練積もうが、人に迷惑かからんし。一人で寂しゅう芋焼こうが、だあれも気に留めんし。
年に一度の恒例行事じゃったけぇ、この時季は五郎もソワソワするんじゃ。
狛村隊長は肉がお好きで野菜はあんまりなんじゃが、皆が集まって焼き芋しとるといつも手伝ってくださった。焼けた芋は五郎と半分こして、女性隊士はそれ見てほくほくしとったな。
焚火つけは東仙隊長が一番上手かった。流魂街での暮らしも長かったらしいからの。葉っぱや小枝を山にする前に、松ぼっくりとか……だったか、少し油を含んどる種っぽいのを核にすると良いとか、何とか。
一角と楠山は鍛錬の合間に食べに来るっちゅうンが多かった。
弓親は「僕は焼いた芋とか
毎年じゃあらんかったが、志波隊長と志波副隊長も楠山に引っ張られて来て山ほど食ってって、着火と鎮火なんて斬魄刀でやっとったな。あれ、後で相棒から恨まれたりしんかったんかの。
しっかし、芋育てるのはやっぱり楠山より
はぁ。ただの焼き芋じゃが、これでも時が経ったんを感じる。アルミホイルやライターなんて便利なモン、昔は無かったけぇの。
「……良いにおいにつられて来ちゃいました。射場さん、今年もやるなら教えてくださいよ」
「……楠山か。体はもうええんか」
「はい、私は大丈夫ですよ。……生きてますし」
「ほうか。そんなら、半分死んどるみたいなその顔どうにかせいよ」
「えぇ、ひっどい!射場さんはサングラスで隠してるだけじゃないですか。どうせ散々男泣きしたんですよね?隈なんか私とそう変わらないと思いますけど。自分ばっかり目元隠しててそれは
「……んじゃホラ、丁度予備のやつ持っとったから芋食う間だけ貸しちゃる」
「え、何であるんですか……あ、掛けてるのに襟にも下げてたんですね……じゃあ借りてあげますよ」
ずんずん寄ってきて、乱暴に予備のサングラスを奪い取られた。阿保たれ、丁寧に扱わんかい。って、マジで掛けるんかい、ソレ。
「……お前、滅茶苦茶似合っとらんな」
「黙ってください」
ちりちり熱をもった紅葉の葉っぱから、煙が
「お前が畑ほっぽってのぅたくれとった間、世話は紋羽がやっとったんじゃ。そのうち礼の一言でも言うとけよ」
「……その
「多分無理じゃ。昨日様子見に行ってきたんじゃが、柿の実ぶつけられておん出された。ワシは
「……っ……ふっ、厳つい蟹さんがいたものですね」
「喧しい。あ、そこ芋の他に
「なば……?」
「ああ、きのこンことじゃけ。安心せ、毒有りの見分けはワシの特技の一つじゃけぇの」
「……射場さんて特技色々もってますけど、どれも地味なんですね」
「喧しいと言うとるんが分からんか。まったく、一角みたいな口利くようになりおって」
「……でも、射場さんくらいです。こうして今も一緒に焼き芋してくれるのなんて」
「来年になったら、きっと皆もまた来るじゃろ」
「そうだと……良いですね。私、こうして外でお芋焼くの昔からずっと好きなんですよ。だから、来年も一緒にやりましょうね。その次も、次も、また百年続けましょうね」
「……サングラス掛けたって泣いたらバレバレじゃ。阿保たれ」
細く長く継ぐ土壌
台風の被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。かくいう私の住む地域も、台風は無常に通っていきました。「生まれて此の方こんなのは初めて」というレベルの雨量で大変なことも色々ありましたが、こうしてまた無事にサイト更新できて嬉しいです。そうそう、良いこともあったんですよ。台風で散りきってしまったはずの庭の金木犀がまた咲いたんです。初秋の花がこんな時期に見られるとは思いませんでした。
“食欲の秋”というお題に則り焼き芋のお話を書き始めたはずが、いつの間にかこんな仕上がりに。秋はどうしても物悲しさが付き纏いますね。このお話の本編主人公さん視点を書くことがもしあったら、おそらく本編の第五章になると思います。……あと何十話先になるかなぁ。
“食欲の秋”というお題に則り焼き芋のお話を書き始めたはずが、いつの間にかこんな仕上がりに。秋はどうしても物悲しさが付き纏いますね。このお話の本編主人公さん視点を書くことがもしあったら、おそらく本編の第五章になると思います。……あと何十話先になるかなぁ。