2022/12/31〜2023/1/31
語り手:四楓院夜一
「お帰りなさーい!どんな感じでした?アッチのほう」
白く無機質な造りの階段を降りてバカでかい空間に飛び出ると、豪勢な夕飯と共に待っておった喜助が陽気に尋ねてきた。三日前からずっと此処に籠りおって、儂であれば退屈で仕方なくて気が滅入るがのう。瀞霊廷内に作った修練場と同じく、また空を模すつもりらしい天井の塗りは中途半端で開放感も足りとらんし。
「予想以上に賑わっとるぞ。なんでも世紀送迎会とやらを田舎でもやってみようとかなんとか……まあ、ただ例年より豪勢に祝うだけみたいじゃがの。麓の人間がどっと押し寄せておる。隠れておって正解じゃったな」
「ヘェ〜!寒いなか山登りなんて大変なのに、皆サン信仰篤いんですねぇ」
「十九世紀最後の夜じゃ、誰もがお祭り騒ぎで盛り上がろうというものよ。そして彼処に祀られておるのはおぬしでも捕捉できんような凄い神様らしいからのう。さぞご利益もあることじゃろ」
「“シロトビ様”っスか……今年コッチ来てから結局一度も見てないんスよね……いいなァ、羨ましいなァ鳳橋サン」
明日は元旦。近辺に暮らす人間達は大晦日の内からあの神社に集い、初詣をするのが年末年始恒例の行事であり行楽なんじゃそうな。昆布茶や甘酒が振る舞われ、蕎麦屋や寿司屋に飴家の屋台なんかも出て、結構な人出じゃ。今日と明日かぎりは境内の外の道でも灯籠が明るく灯され、そうなると神社に近い楠山の屋敷と道場も人目に付く。道場主であった故人の親類や友人が訪れかねんから、勝手に住み込んでおる儂等は一時退散中、という訳じゃ。
というか既に先日、あそこを空き家と思っておる男が二人やって来て大掃除をしていったんじゃがな。「住まなくなって随分経つ割に何故だか全く朽ちてきてないよな?」とか「棚にあったこの落雁まだ食えそうじゃないですか?」とか言ってての、ヒヤッとしたわ(儂等のおやつになるハズじゃった落雁は一度仏壇に供えられた後、男たちの腹におさまった)。
「儂も外を歩くときはそれとなく探してみとるんじゃが、見つからんのう」
「おそらく千年ほど前からずっとこの辺りに居るみたいなんで、遠くには行ってないと思うんスけどねぇ……隠れるのがボクより上手いんだから」
「千年?何か調べが付いておったのか?」
問い返しながら、花見の宴の如く敷かれた茣蓙に腰を下ろす。眼前に並ぶ大皿をぐるりと見回せば、どれもこれも儂と喜助の大好物ばかり。いやぁ目出度い有難い、久方振りの御馳走じゃ。特にこの鯛の兜焼きとあの鹿の大和煮、うまそうじゃのう。
「ええ。屋敷の書斎にある中でも特に古そうな物語に、それっぽい白い鳥が登場するお話があったんスよ。多分……アレは一部事実を元にして書かれた類のモノである気がします。それに、楠山サン家の代々の御先祖サマの日記にも度々出て来てて」
「ほう?ますます興味深いのう。仮に代替わりなどしておらねば、儂等よりずっと年上かもしれんということか。それにしても、楠山家は実は伊勢か香取かとツッコみたくなるのう」
「そこの御家と比べちゃったら歴史は浅いっスけど、確かに気になりますねぇ。こう言っちゃなんですが、干歳サンも普通じゃなかったし…………もっと色々彼女に訊けてればなぁ〜」
「
「だっ、だってぇ!お二人の時間を邪魔したくなかったんですよぉ!」
「おーそうじゃなそうじゃな、分かった分かった。ひとまずその話は後じゃ、せっかくの馳走が冷めてしまうぞ」
「おっと、そうっスね!テッサイさーん!テッサイさんもこっち来て一緒に食べましょー!」
儂と喜助は当然のように胡坐で無体を晒しておったが、鉄裁はキチンと正座で席に着いた。あの筋肉、折り畳んで座るのキツくないんかの。いっつもこうじゃし、もう慣れとるのか。
鬼道に長けておるその器用さは料理の腕にも通ずるのか、鉄裁が作るメシは絶品なんじゃ。瀞霊廷に二度と帰れなくなるかもしれんという無茶によくぞ付き合ってくれたものよ。何と言っても三人寄れば文殊の知恵、儂と喜助だけでは考えの及ばない点や手の届かない所もある。勿論、家事に関してだけではない。穿界門の用意や結界の調整には
「夜一殿、お誕生日おめでとうございます。こちらもどうぞ。この土地の米で作ったおにぎりです」
「お〜山盛りじゃな!ワハハ!すまんのう!」
「そうでしたオメデトっス!うわぁ、すごい数……でもそれくらい夜一さんは平らげちゃいますもんねぇ」
「貴方にはこちらを。お好みの具を入れておきましたぞ」
「わ〜!周りも海苔とかとろろ昆布とか色々で美味しそう!んじゃ、イタダキマース!」
「どうぞ召し上がれ」
三人だけでの年越し、ちと寂しくなるかと思ったが、なかなか良い。ここのところは四楓院家当主として面倒な様式が続いて窮屈じゃったしのう。罪を背負わされてはいるが、今までになく気が軽い。
「夜一サン、もう何日かしたら行ってくるつもりなんスよね?暫く帰れないでしょうし、テッサイさんのご飯の味、噛みしめてくださいね〜」
「うまいメシ食っとる最中にちょっと悲しくさせるでない。まぁ、おぬしらの霊圧は向こうから締め出されとるし、隠密といったら儂の出番じゃろ。任せろ、序でにあの娘のことも見付けてくるぞ」
「今頃、ちゃんとあったかい所にいますかねぇ……夜中に出歩く悪い子になっちゃって……」
「一瞬しか会っとらんのじゃろうが。何を知った風に。その夜はたまたまじゃろ、きっと流魂街の何処かで達者にしておる」
「だといいんスけど」
「お二人とも。食後には菓子も用意しましたので、お腹に余裕がありましたらどうぞ。そしてたった今、年が明けたようですな」
鉄裁は行儀よく両手で持っていた湯呑を置き、喜助の方を向いて言った。
「お誕生日おめでとうございます」
「へへ、ありがとうございますテッサイさん!」
「そうじゃった。律義よのう」
「ねー、夜一さんとボクの誕生日は『忘れられがちだ』って昔からよく話してましたけど、テッサイさんは覚えていてくれるから嬉しいです。いつも一番にお祝いしてくれますよねぇ」
「今ではおぬしも儂も互いにうっかり忘れるというに」
「ホントに!」
「の〜!」
色々あったが、無事に年をくえて何よりじゃった。多分来年の今頃も、こんな感じに生きてそうじゃのう。
年の終わりも末広がり
或る世紀末の一幕をお送りしました。毎日が誰かの誕生日であり、毎日が誰かの命日です。当たり前のことですが、意識してみるとちょっぴり人に優しくなれる気がします。世間では世も末と言われようと、どうか優しい世界であれ。アニメで渋面白いテッサイさんを好演してくださった梁田さんのご冥福を、心よりお祈りいたします。
あと少しで年が明けます。2022年も当サイトにお付き合いくださり誠にありがとうございました!来年もどうぞよろしくお願いします!アニメ千年血戦篇第二期放送は7月からだそうですよ!楽しみですね!
あと少しで年が明けます。2022年も当サイトにお付き合いくださり誠にありがとうございました!来年もどうぞよろしくお願いします!アニメ千年血戦篇第二期放送は7月からだそうですよ!楽しみですね!