2018/11/6~12/30
語り手:市丸ギン
「……見かける度に声を掛けてくるの、
冷たいなァ。声も目も。そんな態度でええの?ボク、仮にも副隊長やで?……なんて、そんな風に疑心暗鬼にさせてるのはこっちなんやけど。
「ええやないの。友達になりたいだけやって、なんべんも言うてるやん」
「こちらこそ何度も言うようですが、それなら“あのこと”をですね……」
「説明せぇって?ほんなら尚更、振り出しに戻るで。キミがどないな人なんかよう知ってからやないと話せへん」
何かと噂の十一番隊四席楠山ちゃんは、今年の春は綜合救護詰所に入院しとった。なんでも、同じ隊の困った男らに殺されかけたとか。そない酷い目に
彼女が入院中、寝てる思て
もし、キミが。キミがもし、口が軽かったり浅慮だったり――何より、弱かったりしたら。この秘密は共有できひん。ボクの切り札について、藍染隊長に知れてまう可能性が一ミリでも増えるのは絶対にアカン。
逆に、もし。もしキミが、口が堅くて思慮深くて――そんで、強いんやったら。話してもええ思てる。独りでやる覚悟はとうに決めてたはずなんやけど、キミがボクと似たようなもん持ってるなら、きっとうまくやってけるはずや。
「……あなたに私を知ってもらおうにも、さあお喋りするかと言われて話すことなんてすぐには思いつきません」
「そ?じゃあぶらぶらっと一緒に歩かへん?三番隊まで行くトコなんやけど」
「……分かりました」
「えっ?ほんま?」
「言っておきますけど、四番隊に行く
「序ででも何でもええよ。気ィ変わってくれたんなら」
「私にも、思う所がなくもないので」
突き抜けるような青い秋晴れの空の下を、それに似つかわしくない空気を纏ってつかず離れずで歩く。ぎこちなく、どこか滑稽。やけど、悪ない。色づいた
「今日、何日やったっけ」
「三日です。十一月三日」
「やっぱしそうか。この日は毎年晴れるんや」
「……ふぅん…」
「あ、嘘や思てる?ほんまやで。あぁと……明日は何やったかな、誰かの誕生日やった気する」
「東仙隊長は十一月生まれだって聞いた気がします」
「あの人はもうちょい先や。おかしいな〜忘れてもた……」
喉まで出かかってんのに。ま、いっか。
諦めたとこで丁度、落ち葉を巻き上げるようにして風が吹いた。通りの端の
「
「秋、好きなんやけどな。短い感じするわ。柿もそろそろ吊るさなあかん時期やね」
「干し柿ご自分でつくられるんですか?」
「ここ何年かは忙しゅうてやってへんなァ。でも今度三番隊の庭に苗植えようかと思てんねん。ボクの一番の好物やし」
「焼き芋ならともかく、干し柿が一番って珍しいですね」
「断然、芋より柿や。それに珍しいこたないで?少なくとももう一人はおるさかい」
「まぁ、確かに美味しいものですからね。私も昔はよく祖父と一緒に作りました」
味もそうやけど。干し柿は、ボクにとっての特別なんや。別にキミに話すようなこととちゃうから今は言わへんけどな。
こういう何気ない会話って久しぶりや。皆ボクのこと恐がって付き
「せや、実ィなったら一緒に作ろうや。手伝ってくれたら分けたってもええで」
「柿八年っていうのに、気が早くありません?」
「死神やっとったら多分あっという間やで?ちゅうわけで、覚えててな」
「……覚えていたとして、八年後に敵になっていたら手伝えませんが」
「おぉっと、案外ずばずば言ってきよるな。おもろいわ」
「人の考えてることなんてそうそう分かるものではないですが、あなたは一段と分かりません」
「そうやろねぇ。……なんで殺さへんのやろ、って思てる?」
楠山ちゃんからすれば、ボクはいつでもキミを殺せる藍染隊長の副官てとこやろか。さっきボクは「キミがどないな人なんか知ってからやないと話せへん」て言うたけど、キミだってボクがどういうやつか測りかねてるはずや。
……だから証明したる。
「キミが“あのこと”を誰にも話さんでおったら、そんで更に強くなっとったら……そんときは、ボクの秘密ちゃんと教えたる。八年も手出さんかったら、流石にキミも信用してくれるやろ?」
「普通ならそうかもしれませんけど。貴方は何年かけようと
「酷ぉ……て、なんやボクのことよう分かってるやん。やっぱ友達になれそうやね、ボクら」
柿なるまでは不即不離
現時点ではまだ、本編で主人公と彼の会話ゼロなんですけど……例によって先取りです。近々公開する19話ではこのお話に関係する部分に触れるので、暫くお待たせ致します。
11/3って晴れの特異日らしいです。それを狙ってた訳ではないのですが、たまたまその日に観光してきました。山中の温泉街のロープウェイに乗って紅葉狩り。快晴で最高でした!
11/3って晴れの特異日らしいです。それを狙ってた訳ではないのですが、たまたまその日に観光してきました。山中の温泉街のロープウェイに乗って紅葉狩り。快晴で最高でした!