2018/12/30~2019/1/26
語り手:志波一心
極月、
経緯は省くが、俺は沙生と蕎麦を作っている。
「鉢に粉
「はい。えぇと、大体四対一で合ってましたよね?」
「おう」
カンカンカチャ、と蕎麦粉につなぎ粉が
「終わりました。じゃあ水いれます」
「頼む。おー……よし、まずそんくらいでいいぞ。あとは加減見ながら足してくから」
人生って分からんもんだな。更木の野郎んとこに時期外れに転がり込んできた浮竹さんが目を掛けてる娘っ子……と、こうして蕎麦打ってんだもん。いやぁ、ほんと。
ころころとおからっぽくなってきたところで、手に水をつけて擦っていく。んー……こんなもんか。
「こっからが大変なんだよ。のど越しのためにゃ腰入れねえと……始まんねえからな!」
「はいはいそうですか」
「ちょっとォ!もうちっとばかし何か反応くれても良くない!?」
「……頑張れ」
「え……あ、うん、え!?応援してくれるの!?頑張っちゃう!!」
「喋ってばかりだと年越し蕎麦が年越して蕎麦になっちゃいますよ。あと何回か繰り返さなくちゃいけないんですから」
まだぽろぽろ状態の蕎麦を纏めていき、徐々に練れる粘度になっていく。この辺は力仕事だから沙生より俺の方が得意だろうし、残りのあと何回かもここの工程は引き受けてやってもいい。
でも考えてみて欲しい。今こうして作ってる俺と沙生の友達と部下と、それから海燕や浮竹さんたち十三番隊の数名に振る舞ってやるってのはまだ分かるんだけどよ。これ、この蕎麦の配達先が書いてあるやつ、見てくれよ。
- - - - - -
- - - - - -
都さん
見坊さん
沢子
仙太郎さん
清音さん、勇音さん
涅隊長
なんでちゃっかり涅!?ねぇなんで!?くそ、なんであいつなんかに俺が年越し蕎麦を打ってやらにゃならんのだ!それはまぁ、涅のやつに「蕎麦打つんですけどご入用ですか?」とか尋ねてきちゃった沙生の所為なわけだが。……やっぱ変わってるよな、気後れもせずに技術開発局で茶ァ飲んでくるようなやつだからな。
「良いですね、力が入ってて。駄洒落は寒かったですけど」
「いちいち傷を抉るようなこと言わない。ほらそろそろできっから、打ち粉の用意」
「はーい」
鉢からどんと板の上に移し、潰して押して伸ばして熨す。麺棒でぱーっと。厚さが均一でいい感じになったら、また打ち粉……お、言わんでもかけてくれた。おし、そんで綺麗に折り畳む。
「できたぜ!切るのも任せていいか?その内に俺は次のにもう取り掛かっとくわ」
「任せてください。このでっかい四角い包丁、一度使ってみたかったんですよね」
見れば、さっき空けた鉢にはもう次の粉が篩われていた。手際が良いじゃねえの。とんとん、と楽し気な一定の調子で蕎麦を切る様子を暫く見届けて、また混ぜる作業に戻る。
――――――
「ふぅ……できました!これでやっと終わりですね」
「お疲れさん。お前器用なんだな〜丁度の太さで揃ってるし、初めてとは思えねぇって出来なんじゃないか?」
「ありがとうございます。一心さんの打ち方が良かったおかげもありますよ」
「そうか?……んじゃ、手分けして届けて、あとはこれ食いながらゆっくり年越しだな!」
――――――
「……って、本当に良いのか?年越しが俺とで」
「十一番隊の皆はもう殆ど酔い潰れてますし、今から十三番隊に行くと年が明けちゃいそうですし」
「消去法かよ」
「そういうつもりでもないんですけど……」
二人で作った蕎麦は、沙生が出汁と醤油の温かいつゆに入れて持ってきてくれた。つゆの味はこいつの爺さん直伝らしい。いい匂いだ。揚げたてのでかい海老天ものっかっていて縁起もいい。何処かで鳴っている鐘の音を聞きながら、
「じゃ、いただきまーす」
「いただきます」
ずずっと一口
「うまっ、俺天才」
「おいしい……!」
あまりの美味しさに黙々と食べ進めていたのだが、ふいに炬燵の中の足がちょんと蹴られた。向かいにいる沙生を見遣ると、いったん箸を置き、改まった様子でいた。
「あの、一心さん」
「ん?なんだ?」
「今年は本当にお世話になりました。来年も――」
ボーン。そこで丁度、日付が変わって時計が鳴った。
なんとも絶妙な間。
「――あれ……こ、今年もよろしくお願いします」
「ン゛フッ、……こちらこそよろしく。明けましておめでとう」
ゆく年くる年、ゆるい時
ゆるゆる。このお話は『このほの』主人公さんが死神になった年の暮れの出来事、という設定です。作中で十一番隊が遠征に行くのは六月なので、その半年後になります。この謎の距離感になるまで一体何が!?……って、また本編予告になってしまいました。2019年の抱負は「本編更新がんばる」です。新年も宜しくお願いいたします。