小ネタA
「どんな人が好きなの?」
彼女は不意に口を開いた。
それがあんまりに自然で、オレはすぐに答えることが出来なかった。
いつだってそうだ。
まるで天気の話でもするように彼女は核心をついてくる。
「・・・・・・すごく、キレイに笑う人」
きっと、数えるほどの時間は無かった。
だけど、確かにためらって口にした答えは奇妙な間を生んだ。
しかし別段そのことを気にするまでもなく、
「そう、」
と、一言だけ。
そうして、オレに向かってすごくキレイな笑顔を見せた。
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欲しかったのはほんの小さな言葉で、それだからこそ手に入らない。
ねえ、本当はうれしかったのよ。
だけど、その手を取ることはできなかった。
その手を取って一緒に行くことはできなかった。
だってそれは許されないことだから。
私がそれをしてしまったら世界が終わってしまう。
あなたのことは好きだけど、でも私にとって世界はそれよりも大切なものだから。
それに、
あなたの生きる世界を守ることが出来るのは私だけだなんて、ちょっと素敵ではない?
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君は、「自分は何も出来ない人間だ」と、いつも悲しそうな顔で笑う。
その顔を僕は見ていたくなくて、「そんなことはない」と、繰り返す。
でも、そんな言葉は君の表面を通り過ぎるだけで、いつだって君の心には届かない。
どうしたら分かってくれますか?
どうしたらあなたの心まで僕の声は届きますか?
あなたのことが好きです。
僕のことを見守っていてくれるあなたのことが好きです。
ただ、傍にいてくれるだけでいい。
ただ、傍にいて笑っていてくれるだけでいい。
君の何気ない言葉に僕がどれだけ救われたことだろう。
君の何気ない仕草に僕はどんなに心躍らせたことだろう。
「生きていていいのだ」と、君は泣きながら言ってくれた。
このまま生きていていいのかの悩む僕の手をそっと握って。
生まれてきてはいけなかった存在ではないのかと自棄になっていた僕の手をそっと握って。
あなたは、何も出来なくなんかない。
だって、僕はあなたに救われたのだから。
いまここに、あなたといることができるのは、他でもない君のおかげなのだから。
いつか君に伝えたい。