Telefonieren.(普→洪)
電話の相手が誰かなんて聞かなくたって分かる。
お前がそんな顔するなんてあいつの前以外ではないだろ?
うれしそうな、
恥ずかしそうな、
俺を落ち着かなくさせる、そんな顔。
今、お前の目の前にいるのは俺だろ?
そんなにあの坊ちゃんのことが好きなのか?
その薬指にはまっていた指輪の行方を俺は知らない。
それに込められた思いも記憶もいたいほど覚えてるってのに。
「・・・・・・何よ」
「べつに」
気まずくなって頭に乗ってた小鳥に手を伸ばす。
触り心地が俺好み。
そういえばずいぶん前に触ったあいつの髪もふわふわで柔らかくて俺好みだったと不意に思い出す。
「お前さ、あいつのこと」
「あいつってオーストリアさんのこと?」
「おう」
「何か余計なことしようと考えてるんじゃないでしょうね?オーストリアさんにちょっかい出したら私が黙っちゃいないからね!」
少しは女らしくなったとも思ってたが・・・
不意に見せる言葉や瞳の鋭さはガキの頃となんの変わりもない。
それはきっと、こっちの方がこいつの本質だからなのだろう。
そして多分、それを見せるのは俺にだけ。
「やっぱなんでもねえよ」
「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」
「じゃあさ、お前のそう言うとこ坊ちゃんには絶対見せんじゃねえぞ」
今はまだ。
いや、この表情はずっと俺だけのもの。
「当たり前でしょ。オーストリアさんにはこんなとこ見せられないわよ。あんたの前だからやってるの!」
「あーはいはい。そうかよ」
願わくば、お前が素顔でいられる場所がいつまでも俺の前でありますように。