生と死を司る紋章
「恨んでないのか?」
かつて帝国貴族のご子息だった少年に俺は問いかけた。
そいつは身じろぎもせず、表情も変えずただそこにいた。
俺が「親友」と呼んだたった一人の存在。
「俺がおまえと同じ立場だったら、きっと俺はおまえを恨んでる」
その力の強大さに。
その力の理不尽さに。
そしてなによりも、そんな重たいものを持っていながら何も話してくれなかった「親友」に対して。
「言えなかったんだ」
大切な存在だったから。
全てを捨てて生きていた俺が、生まれて初めて無くしたくないと思った存在。
失ってしまったら絶対に後悔すると唯一思った存在。
だから言えなかった。
「それでおまえのことが守れると思ってたんだ」
そんなに甘くないって嫌というほど思い知ったけれど。
それでも・・・・
「恨んでないのか?」
かつて俺が「親友」と呼んだ少年は、薄く笑ってこう言った。
「君に会えたから」
かつて俺が「親友」と呼んだ少年は、俺を泣かすことのできる唯一の存在だってことを思い出した。