ここにはもう誰もいない(ルック)
ここにはもう誰もいない。
すべてを見透かすような黒瞳の死神も。
すべてを守ろうとした小さくて大きな盾も。
みんないなくなってしまった。
どこから?
僕の前から。
目を凝らしても何も見えない。
手を伸ばしても何にも触れない。
まるで灰色の闇に囚われているかのように。
頭もだんだん霞んできて何も感じない。
だから、身体にまとわりつく霧ももう不快には感じない。
誰もいないことも。
彼らがいないことも。
ここにはもう誰もいない。
彼らはもういなくなってしまった。
不気味に光る紋章だけを残して。
寂しがりやの黒い鎌と意地っ張りの白い盾。
じゃあ、どうして僕はここにいるの?
『同じじゃないから』
ああ、そうか。
すっかり忘れてたよ。
僕は彼らと同じじゃない。
むしろ僕は、
残された紋章と同じ。
寂しがりやの死神と意地っ張りの盾と。
それから、消して逃れられない一陣の風。
灰色の闇の中。
僕は独りでここにいる。
みんな消えてしまった。
みんないなくなってしまった。
だから、
ここにはもう誰もいない。